「父さんから…逃げてきたんだよ」
「……どういうこと?」
あたしがそう聞き返すと、そのまま海に目を向ける光輝。
どこか遠い目をしている彼に、ただ事ではないことを悟る。
黙っていた光輝だったけれど、しばらく経ってからゆっくりと口を開いた。
「俺の父さん、大企業の社長って知ってるか?」
「え……あぁ、うん」
確か昔に少しだけ聞いたことがあった気がする。
家に遊びに行った時も、周りの家よりも一際大きくて立派なそれに驚いてしばらく動けなかったっけ。
「俺、さ……
その家の一人息子だから、
あとを継がせたがってんだよ」
それを聞いて、それもそうだろうな…と納得するあたし。
それと同時に、何が問題があるんだろう?とも思った。
だって普通なら自分の将来の就職まで決まっていたら安心できるはず。
なのに目の前の光輝はまったく嬉しそうに見えないのだ。
でも、その疑問は次の光輝の言葉によってあっさりと解決されることになる。

