腕を解放されて安堵したのもつかの間のこと。
「……あっ」
両手首を捕まえられたかと思うと、横の壁に押し付けられる。
力を入れてもぴくりとも動かない手に困惑しつつ、あたしは光輝のことを再び見上げた。
さっきの極上の笑顔とは違った、いつもの…本当の光輝の姿。
でも、あたしがさっき思った通り不機嫌そうだ。
その顔がゆっくりと近づいてきて……。
――――キスされる?
そう思ったあたしは、反射的にぎゅっと目を瞑る。
だけど、なかなか唇に触れてこない彼に不思議に思ってうっすらと目を開けると、焦点も合わせられないくらい近くに光輝の顔があった。
唇の前で寸止めされた彼の形のいい唇が動く。
「……遅い」
「だって……」
「だってじゃない」
いつもの声よりも低い声に怖じ気づかないように、必死に冷静さを装う。
しょうがないじゃない。
一人ずつ片っ端から告白ふってたんだから。
それは光輝も分かっているはずなのに、どうしてそんなことを言うんだろう?

