「んー?

 何が気のせいなのかなぁ、雫ちゃん」


「っ、独り言ですっ!」


「あーそんなに怒んないでよー。

 ちょっとからかっただけじゃない」


「……」



むっとしているあたしを見て、愛子は面白そうに声を出して笑う。


そして頭をぽんぽんと撫でてきた。


……また子供扱いして。


本当はそこまで怒っていないけれど、そんなふりをすると愛子がちょっと困ったようにするから面白い。


ま、たまにはこれくらい大丈夫だよね?


やられっぱなしなのもつまんないし。


「あたし、トイレ~」



あれこれしているうちに、愛子は降参したらしい。


舌をぺろっと出して、そのままトイレに行ってしまった。


一人になった席で、ふと目を向けるのはやっぱり光輝の方向だ。


いつからだろう。


こんな変な感情に囚われるようになったのは。


モヤモヤした気持ちが晴れなくて、それが自分を変にさせている気がする。


……まあ、これもきっと一時的だよね?


そう無理矢理自分に言い聞かせて、あたしは食べ終えたお弁当を片付け始めたのだった。