あのバレンタインの日から数日。


あたしは一応、光輝とはちゃんと話すようになった。


っていっても…まだ刺々しいかもしれないけど。


あたしにとってはかなり素直になっている方だ。


だけど…それと同時にさっき感じたようなよく分からない感情に捕らわれる。


その正体が分からないから、最近のあたしは戸惑ったりもするんだ。



「雫ー!」


「なに~?」



リビングから大きな声で呼ぶお母さんに負けないくらいの声で返事をすると、あたしのお弁当を作ってくれているらしいお母さんがキッチンから顔を覗かせた。


「お花に水あげてきて~?

 それから朝食にするから」


「はーい」



普段は植物が好きなお父さんが水やりをするんだけど、今は出張に行っているからあたしに頼んだろう。


庭に出て外用のスリッパに履き替えると、冬の真っ青な空から暖かい太陽の光があたしを包む。


庭の端に置かれたじょうろに水を入れていると、


「俺も手伝うよ」



突然、甘美な声で囁かれた。