「別に…も、う…用がないなら……帰って」
息が上がっているせいで、上手く話すことができない。
そんなあたしの言葉に対して、光輝は
「はいはい」
と言ってふっと笑うと、ベッドから体を起こす。
涙で視界が滲んでいるから詳しくは分からなかったけれど、光輝の顔はほんの少しだけ赤かった気がした。
「……素直じゃないやつ」
「なっ…」
「体はこんなに正直なのにね」
「っ……!」
光輝の言葉にぐっと返答に困ったのは…そう言われてもしょうがないと思ったから。
だって……甘い甘いチョコレートのキスは。
確かにあたしにとって、とても心地よいものだったのだから。
光輝がベッドから降りてドアに向かっているのにもかかわらず、あたしはシーツをぼんやりと見つめることしかできない。
でも、真っ白な視界の隅っこで光輝が何かを思い出したようにこっちを振り返るのが見えた。
「……ちゃんとお返しはするから」
そう一言告げて、光輝はそのまま部屋を出ていってしまった。
そして、それが今回のチョコのことだと認識したのは光輝が部屋を出てしばらく経ってからだった。