意地悪くんと鈍感ちゃんの初恋物語

取り分けた物は、全て美空の好物のはずだ。

「どうしてあたしの好物知ってるの?」

美空は不思議そうに俺を見上げた。
当たり前だ、知ってるんだよ、お前のことなら大抵は。
てかお前、わかりやすいんだよ。

「ふふ、立花さんがなんで? って顔で戸惑ってる。
考えてることが丸わかりなんだよね、瀬田君じゃなくてもわかるってね。
立花さん超かわいい!」

「ね、かわいいねぇ」

クラスメイトが後ろでクスクスと笑う声が聞こえる。
やっぱり不思議そうにそちらを見やる美空に、そのクラスメイト達は手を振った。

「あ、あつ……」

手を振り返して、そのあと小さくて可愛い口でしいたけを一口かじって、美空はそれを皿に戻した。
どう見ても熱いのに、こいつ、鈍感以前にバカだな。
そんな姿も可愛いけど。

「ふぅ」

何、しいたけ一口でぐったりしてるんだよ、バカ可愛い。