1人の姫と4人の王子



「ただいま」


暗い部屋に響く私の声


返事など帰ってくるはずないのにこうやって毎回声に出してしまうのは何故なんだろうか




カチッと私が電気をつけた音


タンタンタンっと私が階段を上る足音


ガチャッと私が部屋を開ける音




全て私がつくりだした音だと意識するとさらに家の中からは他人の気配が感じなくなる




気持ちのいい布団へと制服のまま寝転びふと考える





"親が海外へ行って何年経っただろう"



元々仲のいい家族だったわけでもないし会いたいなんて思ったことはない


けれどたまに。本当に一瞬の間に親の顔が思い浮かぶ




「……別に。悲しいとかじゃないけど」



「へぇー。そのわりには随分くれぇー顔してるけど?」



「なっ!?」




背後からかけられた声に驚き振り返ると無表情な人がのっそりと立っていた




え、この人誰?


何処から入ってきたの?


警察呼ぶべき?





突然の事に様々な感情が頭を駆け巡るも何も言葉が出ず呆然としてしまう



「今日から住み込みでお前の世話する事になった山峯大樹だ」


「はぁ?…え?住み込み?」


「おう、そうだ」




いやいや、わけわかんないから。


親は一体何考えてんの?

普通女子高生の家に男を住み込ませる?



「んで、あんたの名前は?」