午前11時を少し過ぎた頃




今後の学校生活について話を聞き終えた、私を含めた大勢の生徒が雪崩のように校門からでていく



何をするわけでもなくスクールバックから取り出したスマホを片手に、帰り道の古い草だらけである公園の前を通った





キィー。キィー。

と、ブランコの音が耳に届く



この公園に人がいるなんて珍しい


遊具なんて今聞こえるブランコぐらいしかないのに



液晶画面を見ていた目を音の聞こえる方へ向けるとかなりのスピードで走ってくる人影



「は?ちょっ!まっ!っ!!」




気が付くと酷い息苦しさに加え、ふわふわとした茶色か視界いっぱいに広がっていた


軽いパニック状態に陥った私は鯉のように口を動かす





「お姉さん!何年生なんすか?!」


「…え?…こ、高1……あ。」





驚きのあまり初対面の相手に個人情報を教えるという失態をおかしてしまったことに、後悔の思いが頭の中を詰める



自分の聞きたいことが聞けたためか目の前の彼は満面の笑みを浮かべていた





「へー、やっぱり高校生なんっすね。俺、寺本 俊《テラモト シュン》っていいます!お姉さんの名前は?」


「初対面の相手に名前なんて教えると思う?てか、離して。」





冷静になってきた私は、勝手に自己紹介を始めたその人の胸を強く押した


"おっと"とよろけた彼はニコッと邪気のない笑顔を浮かべる




「結愛さん………いい名前ッスね!」


「はっ!?なんでわかったわけ!?」

「生徒手帳お借りしてまーす」


よく見ると笑顔のままの彼の手には先程もらったばかりの生徒手帳

いつの間に取ったんだ、軽く犯罪だぞ。

私の名前をしって満足したのか返せと言えば簡単に返ってきた



「どうもありがと。じゃあね、もう話しかけないで」




背後から聞こえる声を無視し再び帰り道を歩き始める

追いかけてくるのではと思っていたが、どうやら諦めたらしく声は聞こえなくなった








そう、"いいもの見っけ"っと呟いた彼の言葉は私の耳には届かなかった