「こんにちは。中園さんでいいのかな?」



男にしては少し高めの声が左の耳をくすぶる



できればそっとしておいて欲しかったのだが隣の席となってはそうもいかないらしい




「はい。中園です。」


「僕、威土 燈也《イヅチ トウヤ》これから1年間よろしくね」





少し視線を左へ移すと目を細め優しく微笑む顔


確かに裏で"王子"と呼ばれるに相応しい表情だ




取り敢えずぺこりと頭だけ下げておいた




「おい。てめぇ、愛想悪ぃーな。もっと可愛らしくしろよ!」


「っ!」




上から降ってきた先ほどとは違う低い声にびくりと体が震える



真上には"王子"とそっくりだが、少し気の強そうな男。



「はぁ。誠也!もっと優しく言えないの?」

「これでも十分優しく言ってやってんだろ?」




目の前で始まる兄弟喧嘩。




すっかりと私へ視線が向かなくなったころ


大きな音を立て扉が開かれ、関西弁のキャラの濃い先生が席に座るようクラス全体に声をかける


自分のあまりの運の悪さにため息が漏れた


窓の外では新入生を祝福するかのように桜がひらひらと落ちていく