身分違いの恋


 叔母様のお屋敷までは馬車を使えば一時間もかからない距離にある。


 いくら徒歩とはいえ、一時間そこそこで辿り着くはずだ。


 それなのに、気がつけば周囲は少しほの暗く、今は明るい昼間のはずが、太陽は生い茂る緑に隠されていた。

 周囲は太い幹をした木々に囲まれた森の中――。


 どうやら私は道に迷ってしまったらしい。

 ここが何処だかわからず、途方に暮れてしまう。




「君、どうしたんだい?」

「お腹でも痛いのかい?」

 ふいに男性二人がうずくまる私に声を掛けてきた。


 どう見ても人気がないここで、男性が二人もいるのはおかしい。


 彼らはおそらく、真っ当な人間ではないだろう。

 きっと人さらいだ。


 その証拠に、うずくまる私に猫なで声で話している。

 生理的に気持ち悪い。

 私の腕は今、彼らの手に掴まれている。