『おーい、山下ぁ。スカート短いぞ~。
 膝下だって言っただろ』


『はいはーい。すいません、今直しますよーっと』


さげられたスカートの丈は、
数分もしないうちにもとの短さへと戻された。


『こら!すぐ戻してどうする!!』


『みんなこんくらいじゃん!』


『そのピアスも取れ!ケータイをいじるな!』


中年のオヤジと、華の女子高生の終わらないやり取りを、
俺はイライラしながら黙って見ていた。


『おう、どうした?修平』


『ああ、茜か。別になんでもねえよ』


『なんでもなくないだろ。
 まーた怒ってんじゃん。嫉妬深い少年よ』


『誰が嫉妬深いって?怒るぞ』


『修平くんが怒ってるのはアイツにだろ?』


茜が指さす先には、別な女の子を追いかけるように
ガミガミ注意し倒すあのオヤジ。


まあ、その通りなんだけどさ。


『おっ。お前のお姫様がこっち気付いたぞ。
 邪魔者は退散するかな』


『お前ね、調子乗ってからかうなよばーか』


ニヤニヤしながら離れていく茜の背中にそう言い放つ。


そうしてふいに、目が合うんだ。






あっ・・・。





っと思った時にはもう遅い。



格好つける余裕すら与えてくれない彼女は、
俺と向かい合わせで座ると妖艶に笑うんだ。


『修平。何見てたの?さっきから』


『別になんも見てねぇよ。自意識過剰な女め』


『はあ?何か最近かわいくないよね、修平』


『かわいくなくて結構』



ほら、出た。


お前のせいだからな。


魔性の女とはこういうこと。


俺を無遠慮にも振り回す彼女の名前は山下紗季。


俺の、たった一人の、好きな人。