「まあ……確かに前回、紫原さんがお休みだった時は、ココまで荒れなかったけど……疫病神はちょっと……」
神開嬢が顔をしかめていた。
「ゼミクラッシャー?私?」
自嘲的な笑いがこみ上げてくる。
「……まなさん、気にしないで。」
峠くんがそう気遣って手を取って立たせてくれた。
「ありがと。大丈夫。ね、のど乾いた。玄米スープ飲みたい。」
「わかった。」
そう言って峠くんは私を支えて歩かせてくれた。
荷物は、加倉が片付けて持ってくれた。
「紫原さん、もう帰るだろ?今日も送るよ。」
園田氏がそう言ってくれたけど、
「来週、私の発表なんで、これから図書館に籠もってきます。マイクロ見たくて。」
と、断った。
「……体調悪いなら、程々にね。ほんと、熱心だね。紫原さんと池尻さんと足して2で割ったらちょうどいいのに。」
園田氏の言葉に加倉が顔をしかめた。
「それ、どう転んでも、気の強い女ですね。」
……まあ、加倉好みの男には、なれんわな。
院生研に戻ってから、玄米スープをいただいた。
香ばしさと酸味と優しい甘味が心地よくて、ちょっと癒された。
「ほんと美味しい。峠くん、ありがと。」
「……フルーツも、ちょっとなら、食べられる?」
「ん~。今は、いい。図書館行ってくる。」
「紫原。少しゆっくりしろよ。マイクロ見るの、目ぇ疲れるぞ。貧血ならねーか?」
加倉が心配してくれてたけど、
「没頭したいねん。」
と、立ち上がった。
……勉強に集中してるときは、何も考えなくてすむから。
上総(かずさ)んのことを、忘れてられるから。
その日は、図書館の閉館時間まで粘った。
……さすがに頑張り過ぎた。
古いマイクロリーダーはどうしても見にくくて、目に来る。
早く、全てのマイクロフィルムをデータ化してほしいのだが、マイナー分野なのでなかなか需要がないのだろう。
眼精疲労を顕著に感じつつ院生研に戻った。
加倉だけがまだ残っていた。
「峠が、これ、食えって。」
タッパーウェアには、小さく切ったメロンとマンゴーがかわいく並んでいた。
「すごい……。加倉も、食べる?」
「いらねーよ。てか、1つでも多く、食え。とにかく、食え。ことさんの厳命だ。」
山崎医師、加倉にもそんなこと言ってるのか。
みんなにやいやい言われても、却ってプレッシャーで食べられないかも。
「ほなまあ、いただきます。ん!甘い♪いいメロンだー。」
ニコニコ食べてると、加倉が憮然として言った。
「千疋屋だ。」
……そりゃ、すごい。
心して咀嚼してると、加倉が目の前に座った。
「なあ。峠、お前に何か言った?」
「何かって……」
「今まで峠が頑(かたく)なに守ってた壁が、消えてる。コクった?」
「……壁……あったんや。知らんかった。」
「お前、上総しか見えてなかったしな。」
まあ、そうね。
「加倉は知ってたの?」
私の質問を、加倉は鼻で笑った。
「気づかないの、お前と美子さんだけじゃない?」
……マジか。
「そうなんや……」
私はガックリとテーブルに突っ伏した。
「何か、最低。私。……今までめっちゃ峠くんを傷つけてきた気がする……」
少しの沈黙の後、加倉が言った。
「いや、お前らが仲いいのを見てるのは微笑ましいし納得してたぜ。むしろ、どう見ても上総と紫原は共依存だし一緒になるべきなのに、いつまでたってもお前が『いつか別れる』って言ってるから、あきらめきれない部分はあったかもな。」
「……別れたもん。」
「お前が一方的に、な。峠は棚ぼたラッキーだろうけど。」
むーん。
神開嬢が顔をしかめていた。
「ゼミクラッシャー?私?」
自嘲的な笑いがこみ上げてくる。
「……まなさん、気にしないで。」
峠くんがそう気遣って手を取って立たせてくれた。
「ありがと。大丈夫。ね、のど乾いた。玄米スープ飲みたい。」
「わかった。」
そう言って峠くんは私を支えて歩かせてくれた。
荷物は、加倉が片付けて持ってくれた。
「紫原さん、もう帰るだろ?今日も送るよ。」
園田氏がそう言ってくれたけど、
「来週、私の発表なんで、これから図書館に籠もってきます。マイクロ見たくて。」
と、断った。
「……体調悪いなら、程々にね。ほんと、熱心だね。紫原さんと池尻さんと足して2で割ったらちょうどいいのに。」
園田氏の言葉に加倉が顔をしかめた。
「それ、どう転んでも、気の強い女ですね。」
……まあ、加倉好みの男には、なれんわな。
院生研に戻ってから、玄米スープをいただいた。
香ばしさと酸味と優しい甘味が心地よくて、ちょっと癒された。
「ほんと美味しい。峠くん、ありがと。」
「……フルーツも、ちょっとなら、食べられる?」
「ん~。今は、いい。図書館行ってくる。」
「紫原。少しゆっくりしろよ。マイクロ見るの、目ぇ疲れるぞ。貧血ならねーか?」
加倉が心配してくれてたけど、
「没頭したいねん。」
と、立ち上がった。
……勉強に集中してるときは、何も考えなくてすむから。
上総(かずさ)んのことを、忘れてられるから。
その日は、図書館の閉館時間まで粘った。
……さすがに頑張り過ぎた。
古いマイクロリーダーはどうしても見にくくて、目に来る。
早く、全てのマイクロフィルムをデータ化してほしいのだが、マイナー分野なのでなかなか需要がないのだろう。
眼精疲労を顕著に感じつつ院生研に戻った。
加倉だけがまだ残っていた。
「峠が、これ、食えって。」
タッパーウェアには、小さく切ったメロンとマンゴーがかわいく並んでいた。
「すごい……。加倉も、食べる?」
「いらねーよ。てか、1つでも多く、食え。とにかく、食え。ことさんの厳命だ。」
山崎医師、加倉にもそんなこと言ってるのか。
みんなにやいやい言われても、却ってプレッシャーで食べられないかも。
「ほなまあ、いただきます。ん!甘い♪いいメロンだー。」
ニコニコ食べてると、加倉が憮然として言った。
「千疋屋だ。」
……そりゃ、すごい。
心して咀嚼してると、加倉が目の前に座った。
「なあ。峠、お前に何か言った?」
「何かって……」
「今まで峠が頑(かたく)なに守ってた壁が、消えてる。コクった?」
「……壁……あったんや。知らんかった。」
「お前、上総しか見えてなかったしな。」
まあ、そうね。
「加倉は知ってたの?」
私の質問を、加倉は鼻で笑った。
「気づかないの、お前と美子さんだけじゃない?」
……マジか。
「そうなんや……」
私はガックリとテーブルに突っ伏した。
「何か、最低。私。……今までめっちゃ峠くんを傷つけてきた気がする……」
少しの沈黙の後、加倉が言った。
「いや、お前らが仲いいのを見てるのは微笑ましいし納得してたぜ。むしろ、どう見ても上総と紫原は共依存だし一緒になるべきなのに、いつまでたってもお前が『いつか別れる』って言ってるから、あきらめきれない部分はあったかもな。」
「……別れたもん。」
「お前が一方的に、な。峠は棚ぼたラッキーだろうけど。」
むーん。



