翌早朝、峠くんは、一旦自分の部屋に帰ったらしい。
シャワーを浴びて、着替えて、食材と水筒を持って再び来てくれたのだという。
私が目覚めた時には、キッチンからいい香りが漂っていた。
「おはよ。何、作ってるの?」
背後から近づいてそう尋ねると、峠くんは気恥ずかしそうにほほ笑んだ。
「おはよう。朝飯の春キャベツのすり流しと、水筒に詰める玄米スープ。」
「ふ~ん?ん?梅干し?」
「ああ。玄米・昆布・梅干し……1リットル作ったから、夜まで1日かけて飲んで。」
「……何か、お世話かけます。すみません。」
夕べのこともあり、何となく改めてそう言った。
その日のゼミは、大荒れに荒れた。
どうやら園田氏が、昨日私を愛車で送ってったことを坂本氏に自慢したらしく……いつも張り合っている2人が最初から険悪なムードだった。
そして、今週の発表者の池尻嬢は、私への敵意がメラメラ。
私と加倉はいつも通り好戦的なのだけど……今の私は歩くことも、座り続けることもつらい。
野田教授に話を通して、肘掛け付の椅子に身体を預けて参加した。
……その姿勢が、私を普段以上に尊大に見せた……と、後から神開嬢が言っていた。
不穏な空気の中、池尻嬢の発表が始まった。
相変わらず論旨がぶれまくったご都合主義な主張を、加倉があざ笑って突っ込み、私が指摘と質問を繰り返す。
去年から変わらないゼミの形なのだが……ヒトの心が変わっただけで展開は一変した。
池尻嬢が、反論も説明も放棄して、野田教授に泣きついたのだ。
「……まあ……加倉と紫原の指摘はもっともだが……2人とも先輩に対する敬意をもって、だな、穏やかに見守ってやれないのか。」
野田教授の言葉に、坂本氏が苦言を呈した。
「お言葉ですが、それじゃゼミの意味がないじゃありませんか。第一、今までずっと黙認して、今日に限ってそんな。池尻さんは僕から見ても、明らかに準備不足、勉強不足です。」
池尻嬢が、わっと声を挙げて泣いた。
加倉もまた、立ち上がって、荷物を片付けながら吐き捨てた。
「やってらんね~。時間の無駄だわ。」
「おい!加倉!」
園田氏が慌てて加倉を止めようとしてる。
私も席を立とうかと身体を起こそうとした。
「まなさん。危ない。」
峠くんが駆け寄ってきて、よろける身体を支えてくれた。
「ありがと。」
「おいそこ!何やってんだ!峠!勝手に席を立つな!」
野田教授が峠くんにそう怒った。
「峠くんは、私がよろけたのを助けてくれただけです。」
そう言ったけれど、野田教授はバーンと机を叩いて
「もういい!続きは来週!池尻くんも!もうちょっと準備をして発表に臨みなさい!」
と、言い置いて、部屋を出て行ってしまった。
池尻嬢はぶるぶると怒りに震えて、私を睨んだ。
今度はどんな悪口雑言が来るかと待ち構えた。
けど、池尻嬢は
「疫病神!」
とだけ言って、泣いて部屋を出て行った。
疫病神……か。
池尻嬢に言われても、鼻で笑っちゃうだけ。
でも、上総んにとっては、本当に疫病神かもしれない。
シャワーを浴びて、着替えて、食材と水筒を持って再び来てくれたのだという。
私が目覚めた時には、キッチンからいい香りが漂っていた。
「おはよ。何、作ってるの?」
背後から近づいてそう尋ねると、峠くんは気恥ずかしそうにほほ笑んだ。
「おはよう。朝飯の春キャベツのすり流しと、水筒に詰める玄米スープ。」
「ふ~ん?ん?梅干し?」
「ああ。玄米・昆布・梅干し……1リットル作ったから、夜まで1日かけて飲んで。」
「……何か、お世話かけます。すみません。」
夕べのこともあり、何となく改めてそう言った。
その日のゼミは、大荒れに荒れた。
どうやら園田氏が、昨日私を愛車で送ってったことを坂本氏に自慢したらしく……いつも張り合っている2人が最初から険悪なムードだった。
そして、今週の発表者の池尻嬢は、私への敵意がメラメラ。
私と加倉はいつも通り好戦的なのだけど……今の私は歩くことも、座り続けることもつらい。
野田教授に話を通して、肘掛け付の椅子に身体を預けて参加した。
……その姿勢が、私を普段以上に尊大に見せた……と、後から神開嬢が言っていた。
不穏な空気の中、池尻嬢の発表が始まった。
相変わらず論旨がぶれまくったご都合主義な主張を、加倉があざ笑って突っ込み、私が指摘と質問を繰り返す。
去年から変わらないゼミの形なのだが……ヒトの心が変わっただけで展開は一変した。
池尻嬢が、反論も説明も放棄して、野田教授に泣きついたのだ。
「……まあ……加倉と紫原の指摘はもっともだが……2人とも先輩に対する敬意をもって、だな、穏やかに見守ってやれないのか。」
野田教授の言葉に、坂本氏が苦言を呈した。
「お言葉ですが、それじゃゼミの意味がないじゃありませんか。第一、今までずっと黙認して、今日に限ってそんな。池尻さんは僕から見ても、明らかに準備不足、勉強不足です。」
池尻嬢が、わっと声を挙げて泣いた。
加倉もまた、立ち上がって、荷物を片付けながら吐き捨てた。
「やってらんね~。時間の無駄だわ。」
「おい!加倉!」
園田氏が慌てて加倉を止めようとしてる。
私も席を立とうかと身体を起こそうとした。
「まなさん。危ない。」
峠くんが駆け寄ってきて、よろける身体を支えてくれた。
「ありがと。」
「おいそこ!何やってんだ!峠!勝手に席を立つな!」
野田教授が峠くんにそう怒った。
「峠くんは、私がよろけたのを助けてくれただけです。」
そう言ったけれど、野田教授はバーンと机を叩いて
「もういい!続きは来週!池尻くんも!もうちょっと準備をして発表に臨みなさい!」
と、言い置いて、部屋を出て行ってしまった。
池尻嬢はぶるぶると怒りに震えて、私を睨んだ。
今度はどんな悪口雑言が来るかと待ち構えた。
けど、池尻嬢は
「疫病神!」
とだけ言って、泣いて部屋を出て行った。
疫病神……か。
池尻嬢に言われても、鼻で笑っちゃうだけ。
でも、上総んにとっては、本当に疫病神かもしれない。



