タイミング悪く、校舎のエントランスで池尻嬢に遭遇した。
池尻嬢の表情ががらりと変わった。
怒ってる怒ってる。
……正直なところ、私には園田氏の魅力がわからない。
嫌な奴とは思わないけど、押しの弱い草食系オタクで、話も合わないと思う。
池尻嬢に嫌がらせする気もないし、本当に車で送ってもらうだけなのだけど……伝わらないよなあ。
「池尻さん。レジュメ、机に置いといたから。わからないとこ、あったら明日。」
「……はい。お疲れ様でした。また明日よろしくお願いします。」
「池尻さん、お疲れ様でした。お先に失礼します。」
私の挨拶には、無言で睨まれてしまった。
明日のゼミは荒れそうだな。
園田氏の車は型遅れのスポーツカーで、2ドア2シーター。
「明日の朝も迎えに来てあげようか?」
わざわざサングラスをかけた園田氏に内心苦笑しながら首を横に振った。
「甘やかしてたらいつまでたっても体力つきませんから。がんばって自力で行きます。」
そう言ったけど……今日の分の体力は既に底をついてしまったようだ。
園田氏があれこれ話しかけてくるのだが……次第に私のまぶたが下がってきて……眠ってしまった。
頬に何かが触れたのを感じて目を開けた。
「あ、起きた?紫原さん。」
園田氏の指が私の頬に宛てられていた。
「……私、寝てしまってたんですね……」
「ああ。」
「で、なんで触ってんですか?」
「あ。ごめん。紫原さんが泣き出したから。涙を拭こうと思って……」
……びっくりしたけど、園田氏の言葉にやましさは感じなかった。
「泣いてましたか。」
園田氏からティッシュを受け取って、自分で涙を拭った。
「イロイロ噂が流れてるけど……気にしないで、言いたい奴には言わせておけばいいよ。」
サングラスをはずして、園田氏がそう言った。
慰めてくれてるらしい。
「……どんな噂があるんですか?私、全然知らないんです。」
私がそう言うと、園田氏はちょっと困っていた。
「聞かないほうがよさそうですね。」
ため息をついた。
「彼氏と別れた?」
ためらいがちに園田氏が聞いてきた。
「……はい。わかりますか?別に髪を切ったわけでもないのに。」
開き直ってそう言ってみた。
園田氏は痛々しそうな表情をした。
「そりゃわかるよ。ほんの数日でそこまでやつれて。いつもしてた時計もしてないし。……つらい別れだったんだろうね。」
……。
心の中にいろんな感情がうずまいた。
うるさい!ほっといて!
他人に何がわかるねん!
お前に言われたかねーよ!
そんな反発がほとんどだったけど……自分でコントロールできない想いも生じていた。
つらいの。
本当は別れたくないの。
独りは嫌。
淋しいの。
助けて。
誰か、助けて……。
夜遅くに、峠くんが来てくれた。
ほとんど使ってないキッチンで、どうやらスープを作ってくれているらしい。
「……あれから、何か飲んだり食ったりしました?」
そう聞かれて、ちょっと考える。
「峠くんのスープ。夕方、残りを飲ませてもらった。ありがと。」
峠くんは苦笑した。
「それだけ?せめてお茶ぐらい飲まないと、これから夏になったら脱水症状起こしますよ。……まなさん、お菓子はもともと食べないけど、フルーツは食べられるんですよね?明日からおやつに準備します。」
「……うん。何か、お世話と手間だけじゃなくて、お金もかかるね。レシート回してね。」
私がそう言うと、峠くんはちょっと躊躇ってから、言った。
「いや。……食材のほとんどは店の残りモンだし、フルーツは上総が届けてくれるらしい。」
ドクン!と、心音が跳ね上がった。
池尻嬢の表情ががらりと変わった。
怒ってる怒ってる。
……正直なところ、私には園田氏の魅力がわからない。
嫌な奴とは思わないけど、押しの弱い草食系オタクで、話も合わないと思う。
池尻嬢に嫌がらせする気もないし、本当に車で送ってもらうだけなのだけど……伝わらないよなあ。
「池尻さん。レジュメ、机に置いといたから。わからないとこ、あったら明日。」
「……はい。お疲れ様でした。また明日よろしくお願いします。」
「池尻さん、お疲れ様でした。お先に失礼します。」
私の挨拶には、無言で睨まれてしまった。
明日のゼミは荒れそうだな。
園田氏の車は型遅れのスポーツカーで、2ドア2シーター。
「明日の朝も迎えに来てあげようか?」
わざわざサングラスをかけた園田氏に内心苦笑しながら首を横に振った。
「甘やかしてたらいつまでたっても体力つきませんから。がんばって自力で行きます。」
そう言ったけど……今日の分の体力は既に底をついてしまったようだ。
園田氏があれこれ話しかけてくるのだが……次第に私のまぶたが下がってきて……眠ってしまった。
頬に何かが触れたのを感じて目を開けた。
「あ、起きた?紫原さん。」
園田氏の指が私の頬に宛てられていた。
「……私、寝てしまってたんですね……」
「ああ。」
「で、なんで触ってんですか?」
「あ。ごめん。紫原さんが泣き出したから。涙を拭こうと思って……」
……びっくりしたけど、園田氏の言葉にやましさは感じなかった。
「泣いてましたか。」
園田氏からティッシュを受け取って、自分で涙を拭った。
「イロイロ噂が流れてるけど……気にしないで、言いたい奴には言わせておけばいいよ。」
サングラスをはずして、園田氏がそう言った。
慰めてくれてるらしい。
「……どんな噂があるんですか?私、全然知らないんです。」
私がそう言うと、園田氏はちょっと困っていた。
「聞かないほうがよさそうですね。」
ため息をついた。
「彼氏と別れた?」
ためらいがちに園田氏が聞いてきた。
「……はい。わかりますか?別に髪を切ったわけでもないのに。」
開き直ってそう言ってみた。
園田氏は痛々しそうな表情をした。
「そりゃわかるよ。ほんの数日でそこまでやつれて。いつもしてた時計もしてないし。……つらい別れだったんだろうね。」
……。
心の中にいろんな感情がうずまいた。
うるさい!ほっといて!
他人に何がわかるねん!
お前に言われたかねーよ!
そんな反発がほとんどだったけど……自分でコントロールできない想いも生じていた。
つらいの。
本当は別れたくないの。
独りは嫌。
淋しいの。
助けて。
誰か、助けて……。
夜遅くに、峠くんが来てくれた。
ほとんど使ってないキッチンで、どうやらスープを作ってくれているらしい。
「……あれから、何か飲んだり食ったりしました?」
そう聞かれて、ちょっと考える。
「峠くんのスープ。夕方、残りを飲ませてもらった。ありがと。」
峠くんは苦笑した。
「それだけ?せめてお茶ぐらい飲まないと、これから夏になったら脱水症状起こしますよ。……まなさん、お菓子はもともと食べないけど、フルーツは食べられるんですよね?明日からおやつに準備します。」
「……うん。何か、お世話と手間だけじゃなくて、お金もかかるね。レシート回してね。」
私がそう言うと、峠くんはちょっと躊躇ってから、言った。
「いや。……食材のほとんどは店の残りモンだし、フルーツは上総が届けてくれるらしい。」
ドクン!と、心音が跳ね上がった。



