病室に入って来た峠くんは、私を見て、まゆをひそめた。
「まなさん。なんて顔してんですか。」
「え?ひどい?」
慌てて鏡を探す。
ない。
てか、この病室、ティッシュもテレビも時計もない。
家具はやたら豪華なのに、何もない。
「鏡ぐらいないの?特別室でしょ?」
山崎医師にそう聞くと、肩をすくめられた。
「君が興奮して手当たり次第投げられたらかなわないから、片付けた。見たいなら、ちゃんと食べて、自分の足でトイレに行けるようになるんだね。」
トイレ……。
ハッとした。
どのぐらいの時間、点滴してたのかわからないけど、入れるからには出てるはず!
オムツ!?
オマル!?
キョロキョロする私に、山崎医師は意地悪くほくそ笑んだ。
「気づいた?今は膀胱から管を通して、ベッド脇にかけたバッグに垂れ流し中。」
嫌~~~~~っ!!!
「取って!早く取って!」
「峠くんいるのに?」
私は涙目で山崎医師を睨み付け、シーツを引っ張って尿のバッグを隠した。
峠くんは、病室で雑炊を作ってくれた。
最高に食欲をそそる一番だしでご飯を柔らかくなるまでじっくり煮て、仕上げに火を止めてから、卵と湯葉。
三つ葉と海苔、こまかく摺った胡麻。
最後に柚子の皮を少し削ってくれた。
「すごーい。めちゃめちゃおいしそう。」
峠くんは変な顔をしながら、雑炊を取り分けて手渡してくれた。
「……食欲あるように見えるけど。」
「だって間違いなく美味しいもん、これ。……ほら、山崎先生もめちゃ食べたそう。」
小さな陶器のスプーンに峠くんの心遣いを感じながら、そっと口に運んだ。
あったかーい。
いい香り。
鮮烈な三つ葉が爽やかで、湯葉のとろっとろがなめらかで……美味しくて涙がこぼれた。
「……峠くん。ありがと。すごく美味しい。」
そう言ってスプーンを置くと、うつむいて嗚咽した。
いつの間にか、山崎医師が箱ティッシュを持ってきてくれた。
「投げるなよ。」
そう念を押して、ティッシュとゴミ箱を手元に置いてくれた。
「……遅い。シーツめっちゃ濡れた。」
そう言ながら、ティッシュで鼻をかんだ。
「外に、何人かいるけど。会う?」
山崎医師にそう聞かれた瞬間、ビクッと体が硬直した。
のどの奥が、グググーッと膨らんだのか、圧迫されたのか……とにかく息苦しくなった。
「ハッ……ハアッ……あっ……」
声が出ない。
驚いて駆け寄ってくれた峠くんの両腕をぐっと掴んだ。
まるっきり、溺れる者は藁をも掴む、状態だった。
口をパクパクさせても、言葉が出ない。
「わかった。嫌なら無理強いしないから。安心して。」
山崎医師がそう言ながら、背中をさすってくれた。
「眠剤入れるから、ゆっくり眠るといい。」
「薬、嫌……。」
ぶるぶると震えながら、首を横に振った。
「大丈夫だから。落ち着いて。とにかく眠ったほうが、」
「嫌やってば!」
発作的に、山崎医師の持っていた小さな点滴のパックを振り払って、自分の腕から針を抜こうとした。
「まなさんっ!」
峠くんが慌てて私の両手を掴んで、そのまま自分の腕の中にすっぽりとおさめた。
……つまり、抱かれてる?
驚いたけど、嫌な気はしなかった。
「まなさん。なんて顔してんですか。」
「え?ひどい?」
慌てて鏡を探す。
ない。
てか、この病室、ティッシュもテレビも時計もない。
家具はやたら豪華なのに、何もない。
「鏡ぐらいないの?特別室でしょ?」
山崎医師にそう聞くと、肩をすくめられた。
「君が興奮して手当たり次第投げられたらかなわないから、片付けた。見たいなら、ちゃんと食べて、自分の足でトイレに行けるようになるんだね。」
トイレ……。
ハッとした。
どのぐらいの時間、点滴してたのかわからないけど、入れるからには出てるはず!
オムツ!?
オマル!?
キョロキョロする私に、山崎医師は意地悪くほくそ笑んだ。
「気づいた?今は膀胱から管を通して、ベッド脇にかけたバッグに垂れ流し中。」
嫌~~~~~っ!!!
「取って!早く取って!」
「峠くんいるのに?」
私は涙目で山崎医師を睨み付け、シーツを引っ張って尿のバッグを隠した。
峠くんは、病室で雑炊を作ってくれた。
最高に食欲をそそる一番だしでご飯を柔らかくなるまでじっくり煮て、仕上げに火を止めてから、卵と湯葉。
三つ葉と海苔、こまかく摺った胡麻。
最後に柚子の皮を少し削ってくれた。
「すごーい。めちゃめちゃおいしそう。」
峠くんは変な顔をしながら、雑炊を取り分けて手渡してくれた。
「……食欲あるように見えるけど。」
「だって間違いなく美味しいもん、これ。……ほら、山崎先生もめちゃ食べたそう。」
小さな陶器のスプーンに峠くんの心遣いを感じながら、そっと口に運んだ。
あったかーい。
いい香り。
鮮烈な三つ葉が爽やかで、湯葉のとろっとろがなめらかで……美味しくて涙がこぼれた。
「……峠くん。ありがと。すごく美味しい。」
そう言ってスプーンを置くと、うつむいて嗚咽した。
いつの間にか、山崎医師が箱ティッシュを持ってきてくれた。
「投げるなよ。」
そう念を押して、ティッシュとゴミ箱を手元に置いてくれた。
「……遅い。シーツめっちゃ濡れた。」
そう言ながら、ティッシュで鼻をかんだ。
「外に、何人かいるけど。会う?」
山崎医師にそう聞かれた瞬間、ビクッと体が硬直した。
のどの奥が、グググーッと膨らんだのか、圧迫されたのか……とにかく息苦しくなった。
「ハッ……ハアッ……あっ……」
声が出ない。
驚いて駆け寄ってくれた峠くんの両腕をぐっと掴んだ。
まるっきり、溺れる者は藁をも掴む、状態だった。
口をパクパクさせても、言葉が出ない。
「わかった。嫌なら無理強いしないから。安心して。」
山崎医師がそう言ながら、背中をさすってくれた。
「眠剤入れるから、ゆっくり眠るといい。」
「薬、嫌……。」
ぶるぶると震えながら、首を横に振った。
「大丈夫だから。落ち着いて。とにかく眠ったほうが、」
「嫌やってば!」
発作的に、山崎医師の持っていた小さな点滴のパックを振り払って、自分の腕から針を抜こうとした。
「まなさんっ!」
峠くんが慌てて私の両手を掴んで、そのまま自分の腕の中にすっぽりとおさめた。
……つまり、抱かれてる?
驚いたけど、嫌な気はしなかった。



