昼の部が始まった。
結局、上総(かずさ)んを心配してわざわざ指導に来てくださった蓬莱屋の大旦那と隣同士の席を準備していただいて観劇した。
……芸裏(花道より下手)だったけど、5列目のお席で。
ものすごーく居心地が悪い。
8代目と並んで座るなんて……本気で勘弁してほしい。
上総さんがフルメークを施してくれたんだけど、それがまた人目を引くんだよー。
つらい。
つらすぎる。
最初の演目は、真山青果の活歴。
もともと上総んはモブで出演していた。
……そのまま出るんや。
あれ?
もしかして、上総ん、休みなし?
この幕間(まくあい)は30分あるので、8代目に連れられて地下のお蕎麦屋さんに入った。
……なるべく量の少なそうなざる蕎麦を一生懸命食べる……残して顰蹙(ひんしゅく)を買いたくないので必死だ。
「学美さんと仰ったかな?和成くんとは、長いのかい?」
8代目にそう聞かれて、私は噎(む)せてしまった。
ゴホゴホと涙目で咳をして、お茶を飲んでようやく落ち着いてから慎重に言った。
「いえ。知り合ったのも最近ですし、私は京都に住んでおりますのでお会いしたのも数えるほどです。」
「……それにしては、かず坊はあなたに気を許してるようだが。」
かず坊!
「8代目もかず坊ってお呼びになるんですね。」
ふふっと笑いがこみ上げてきた。
「おや。……女将も知ってるのかい?」
8代目の私を見る目が一気に変わったのを感じた。
「ええ。おかあさん、素敵ですよね。」
「……そうだね。あのヒトは本当に美しい人だね。」
心から賛同してうなずいた。
2つめの演目は松羽目物。
ここにぼっちゃんが出るはずだった……ので、上総んが代役に立った。
台詞は少ないけれど、花道から舞台に出て、終盤まで動きもある役。
上総んは、堂々と演じきった。
幕が下りた後、すぐに8代目に聞いた。
「上総ん、よかったですよね!?」
「……まあ、あれは勉強会でもやったことあるから。」
8代目の口から出たのはそんな言葉だったけれど、顔は満足そうだった。
よかった!
そして、3つめは、心中物。
今回は近松ではなく岡本綺堂の嘆美な道行きを楽しむ演目。
ここで、ぼっちゃんはかなりいい役をもらっていた。
主役の弟で、つまらない喧嘩をして殺される役。
もともとの上総んは、ただいるだけの町人の役。
……立場の違いとはいえ、せつない。
ぼっちゃんの代役でも、こうして主役を説教して遊女をなじる上総んは、今まで役がつかなかったことがおかしい!と誰もが思うほどに上手かった。
てか、あんなに綺麗な美丈夫なのに、芸には堅物なくそ真面目って……萌えるやろw
絶対、上総ん、人気うなぎ登りだわ、これ。
終演後、案の定、上総んは話題になっていた。
今まで上総んを知らなかったヒトはもちろん、脇でも美形なので注目していたヒトも、ディープな歌舞伎ファンまでも!
……まあ、ぼっちゃんの出来があまりよくなかっただけに、上総んがすごくよく見える部分もあるような気もするけど。
いずれにしても、大成功だろう。
結局、上総(かずさ)んを心配してわざわざ指導に来てくださった蓬莱屋の大旦那と隣同士の席を準備していただいて観劇した。
……芸裏(花道より下手)だったけど、5列目のお席で。
ものすごーく居心地が悪い。
8代目と並んで座るなんて……本気で勘弁してほしい。
上総さんがフルメークを施してくれたんだけど、それがまた人目を引くんだよー。
つらい。
つらすぎる。
最初の演目は、真山青果の活歴。
もともと上総んはモブで出演していた。
……そのまま出るんや。
あれ?
もしかして、上総ん、休みなし?
この幕間(まくあい)は30分あるので、8代目に連れられて地下のお蕎麦屋さんに入った。
……なるべく量の少なそうなざる蕎麦を一生懸命食べる……残して顰蹙(ひんしゅく)を買いたくないので必死だ。
「学美さんと仰ったかな?和成くんとは、長いのかい?」
8代目にそう聞かれて、私は噎(む)せてしまった。
ゴホゴホと涙目で咳をして、お茶を飲んでようやく落ち着いてから慎重に言った。
「いえ。知り合ったのも最近ですし、私は京都に住んでおりますのでお会いしたのも数えるほどです。」
「……それにしては、かず坊はあなたに気を許してるようだが。」
かず坊!
「8代目もかず坊ってお呼びになるんですね。」
ふふっと笑いがこみ上げてきた。
「おや。……女将も知ってるのかい?」
8代目の私を見る目が一気に変わったのを感じた。
「ええ。おかあさん、素敵ですよね。」
「……そうだね。あのヒトは本当に美しい人だね。」
心から賛同してうなずいた。
2つめの演目は松羽目物。
ここにぼっちゃんが出るはずだった……ので、上総んが代役に立った。
台詞は少ないけれど、花道から舞台に出て、終盤まで動きもある役。
上総んは、堂々と演じきった。
幕が下りた後、すぐに8代目に聞いた。
「上総ん、よかったですよね!?」
「……まあ、あれは勉強会でもやったことあるから。」
8代目の口から出たのはそんな言葉だったけれど、顔は満足そうだった。
よかった!
そして、3つめは、心中物。
今回は近松ではなく岡本綺堂の嘆美な道行きを楽しむ演目。
ここで、ぼっちゃんはかなりいい役をもらっていた。
主役の弟で、つまらない喧嘩をして殺される役。
もともとの上総んは、ただいるだけの町人の役。
……立場の違いとはいえ、せつない。
ぼっちゃんの代役でも、こうして主役を説教して遊女をなじる上総んは、今まで役がつかなかったことがおかしい!と誰もが思うほどに上手かった。
てか、あんなに綺麗な美丈夫なのに、芸には堅物なくそ真面目って……萌えるやろw
絶対、上総ん、人気うなぎ登りだわ、これ。
終演後、案の定、上総んは話題になっていた。
今まで上総んを知らなかったヒトはもちろん、脇でも美形なので注目していたヒトも、ディープな歌舞伎ファンまでも!
……まあ、ぼっちゃんの出来があまりよくなかっただけに、上総んがすごくよく見える部分もあるような気もするけど。
いずれにしても、大成功だろう。



