早速、掲示板の書き込みを辿ってみた。
……熱いファン、けっこう多いのね。
中には、過去の異性関係目撃情報とか、上総んの結婚相手にファンが望む条件とか……確かに興味深かった。
12代目の隠し子ネタも、当たり前のように語られていた。
もし上総んが、普通に名題になって終わるのなら、あるいはタレント活動に打って出るのも有りかもしれない。
でも、例えば、誰かの芸養子になったり、誰かの名跡を継ぐのなら、ますます歌舞伎に精進して、結婚相手も梨園からか、御贔屓筋のお嬢様ということになるだろう。
さらに、万が一、本当のお父様のお名前を将来的に継ぐことになりそうなら……
襲名興行の費用の半分は、歌舞伎役者本人供出しなきゃならないって……億単位よね?もちろん。
ひや~~~。
……お金……。
上総ん、お金持ちのお嬢様と結婚しなきゃいけないんだ。
何とも言えず、ひどく俗物的で、滑稽な気がした。
でも、これが現実。
なんて世知辛い世の中。
……やっぱり、その程度のご縁なんだろうな、私とは。
父は普通の会社員。
私が研究者になれたとしても、頂点は大学教授。
ダメだ。
タイミングよく上総んから電話がかかってきた。
『学美?今夜、お呼ばれで京都に行くんだけど、その後、会えない?』
お呼ばれ……。
「人気者は大変ね。」
思わずそんな風に言ってしまった。
『あれ?不機嫌?どうしたの?何か、あった?』
「……上総ん、ネットで婚約したことになってる。……迷惑かけて、悪かったわね。」
憮然としてそう言った。
電話のむこうで、素っ頓狂な声がした。
そして、笑いを含んだ声で上総んが言った。
『な~に卑屈になってんの!ちっとも迷惑じゃないよ。何なら、あちこちに学美を連れて歩いて紹介して廻りたいぐらいなのに。』
「……いや、それは、私が迷惑。」
『ほんと、つれないねえ。』
上総んの嘆きが心地よく感じた。
夜22時。
上総んの京都の定宿へ行くと、既に私を覚えたらしいホテルマンが何も言わなくても案内してくれた。
「……え……また、プレジデンシャルスイートなんですか?」
驚いてそう聞くと、恭しく頷かれた。
「宿泊料、高いんじゃないですか?」
恐る恐るそう聞くと、予想外の答えが返ってきた。
「この部屋には値段がついてません。一見(いちげん)さんには法外な値段をお知らせしますが、当ホテルがお泊まりいただきたいお客様には、普通のお部屋の料金でお入りいただいております。」
……それって、すごいことかも。
「上総んがご近所出身だから、ですか?」
「……それもありますが……この部屋は12代目のために改装を重ねた部屋でした。」
控えめにそう言われて、思わずため息が出た。
「そうでしたか。」
歌舞伎界だけじゃない、ご近所つまり祇園では有名なのかもしれない……上総んが誰の子か。
愛されてるなあ。
なんか、私、アウェイだ。
23時を過ぎても、上総んは来なかった。
ギリギリまで待ってみたけど、終電に間に合わないので、悪いけど帰らせてもらった。
……いつ来るかわからない男を待つ女になりたくない、気がした。
逢いたい想いより、そんなプライドが強かった。
……熱いファン、けっこう多いのね。
中には、過去の異性関係目撃情報とか、上総んの結婚相手にファンが望む条件とか……確かに興味深かった。
12代目の隠し子ネタも、当たり前のように語られていた。
もし上総んが、普通に名題になって終わるのなら、あるいはタレント活動に打って出るのも有りかもしれない。
でも、例えば、誰かの芸養子になったり、誰かの名跡を継ぐのなら、ますます歌舞伎に精進して、結婚相手も梨園からか、御贔屓筋のお嬢様ということになるだろう。
さらに、万が一、本当のお父様のお名前を将来的に継ぐことになりそうなら……
襲名興行の費用の半分は、歌舞伎役者本人供出しなきゃならないって……億単位よね?もちろん。
ひや~~~。
……お金……。
上総ん、お金持ちのお嬢様と結婚しなきゃいけないんだ。
何とも言えず、ひどく俗物的で、滑稽な気がした。
でも、これが現実。
なんて世知辛い世の中。
……やっぱり、その程度のご縁なんだろうな、私とは。
父は普通の会社員。
私が研究者になれたとしても、頂点は大学教授。
ダメだ。
タイミングよく上総んから電話がかかってきた。
『学美?今夜、お呼ばれで京都に行くんだけど、その後、会えない?』
お呼ばれ……。
「人気者は大変ね。」
思わずそんな風に言ってしまった。
『あれ?不機嫌?どうしたの?何か、あった?』
「……上総ん、ネットで婚約したことになってる。……迷惑かけて、悪かったわね。」
憮然としてそう言った。
電話のむこうで、素っ頓狂な声がした。
そして、笑いを含んだ声で上総んが言った。
『な~に卑屈になってんの!ちっとも迷惑じゃないよ。何なら、あちこちに学美を連れて歩いて紹介して廻りたいぐらいなのに。』
「……いや、それは、私が迷惑。」
『ほんと、つれないねえ。』
上総んの嘆きが心地よく感じた。
夜22時。
上総んの京都の定宿へ行くと、既に私を覚えたらしいホテルマンが何も言わなくても案内してくれた。
「……え……また、プレジデンシャルスイートなんですか?」
驚いてそう聞くと、恭しく頷かれた。
「宿泊料、高いんじゃないですか?」
恐る恐るそう聞くと、予想外の答えが返ってきた。
「この部屋には値段がついてません。一見(いちげん)さんには法外な値段をお知らせしますが、当ホテルがお泊まりいただきたいお客様には、普通のお部屋の料金でお入りいただいております。」
……それって、すごいことかも。
「上総んがご近所出身だから、ですか?」
「……それもありますが……この部屋は12代目のために改装を重ねた部屋でした。」
控えめにそう言われて、思わずため息が出た。
「そうでしたか。」
歌舞伎界だけじゃない、ご近所つまり祇園では有名なのかもしれない……上総んが誰の子か。
愛されてるなあ。
なんか、私、アウェイだ。
23時を過ぎても、上総んは来なかった。
ギリギリまで待ってみたけど、終電に間に合わないので、悪いけど帰らせてもらった。
……いつ来るかわからない男を待つ女になりたくない、気がした。
逢いたい想いより、そんなプライドが強かった。



