でも、上総んは怒らなかった。
ちょっと目を赤くして、私を見ていた。
「……自分で決めたんだよ。この世界に入る時。師匠とぼっちゃんの邪魔にならない、って。……なのに、誰もかれも、俺に父を重ねて、期待して……俺の自尊心をくすぐるんだ。まるで悪魔のささやきだ。」
そう言って、上総んは私をぎゅーっと抱きしめた。
まるで母親に甘えるかのように。
「……なんだ。ちゃんとあるんや、12代目の息子としての自尊心。だったら卑屈なこと言うてんと、自分のやるべきことしたら?」
そう言って、もう一度、ペチッと上総んの額を軽く叩いた。
「やるべきことって……」
困惑してる上総んの首に両腕を巻き付けて、ぐいっと力を入れて引き寄せた。
「いつでも主役張れるぐらいにお稽古する!いただいたお仕事も断らないで何でもやる!……上総んがどれだけ隠しても、否定しても、先代を知ってるヒトが見れば一目瞭然なんでしょ?それでいいじゃない。あとは、なるようになるんじゃない?」
そう言ってから、綺麗な唇に、自分の唇を押し付けた。
……はじめて、自分からキスしちゃった。
恥ずかしいけど、両目を見開いて、じーっと見つめた。
「敵わないな。」
上総んはそう言って、目を伏せた。
「勉強会とか、あるんでしょ?ガツーンとかましてやんなさいよ。」
「……ああ、まあ、勉強会ではずっと主役を務めさせていただいてるよ、おかげさまで。」
「ほう!好評?」
「当たり前だろ。俺を誰だと思ってんの?」
意外と強気な発言じゃないか。
「ふ~ん?じゃあ、次の勉強会も楽しみにしてる。……たぶん上総んは、真ん中がふさわしいと思うよ?」
そう言ってキスしてから、私はベッドを出た。
「じゃ、帰る。また来るわ。」
「もう?……もっぺん、しよ?」
上総んがそう言って手招きする。
「やーよ。元気が有り余ってるなら、お稽古したら?」
私も帰って、院試の勉強しなきゃ。
将来のために、今、すべきことをしよう。
それぞれの場所で。
数日後、松尾教授が大笑いしながら電話を寄越した。
「もしもし?楽しそうですね。どうなさいました?」
そう聞くと、松尾教授は笑いを納めきれず、途切れ途切れに言った。
『……紫原(しはら)~、ネット見て、ネットの掲示板。上総(かずさ)丈に婚約者がいるんだってよ。』
え……。
「何ですか?それ。」
ドキドキする。
相手は、芸能人?
『何って、ほら、初日の終演後。上総丈、走って私達のところに来たでしょ?あれ、見てたヒトが、紫原のことを恋人、私は紫原の母親って勘違いしたみたい。親公認だから婚約者だろうって~~~。』
はあ?
「ずいぶんと単純なヒトが無責任な書き込みしたもんですね。しょーもない。」
吐き捨てるようにそう言ったけれど、松尾教授は真面目な声で言った。
『まあ憶測は確かにしょうもないけど、興味深い書き込みも多々あったわよ。見てみなさいよ。ふふ。』
楽しそうにそう言って、松尾教授は電話を切った。
ちょっと目を赤くして、私を見ていた。
「……自分で決めたんだよ。この世界に入る時。師匠とぼっちゃんの邪魔にならない、って。……なのに、誰もかれも、俺に父を重ねて、期待して……俺の自尊心をくすぐるんだ。まるで悪魔のささやきだ。」
そう言って、上総んは私をぎゅーっと抱きしめた。
まるで母親に甘えるかのように。
「……なんだ。ちゃんとあるんや、12代目の息子としての自尊心。だったら卑屈なこと言うてんと、自分のやるべきことしたら?」
そう言って、もう一度、ペチッと上総んの額を軽く叩いた。
「やるべきことって……」
困惑してる上総んの首に両腕を巻き付けて、ぐいっと力を入れて引き寄せた。
「いつでも主役張れるぐらいにお稽古する!いただいたお仕事も断らないで何でもやる!……上総んがどれだけ隠しても、否定しても、先代を知ってるヒトが見れば一目瞭然なんでしょ?それでいいじゃない。あとは、なるようになるんじゃない?」
そう言ってから、綺麗な唇に、自分の唇を押し付けた。
……はじめて、自分からキスしちゃった。
恥ずかしいけど、両目を見開いて、じーっと見つめた。
「敵わないな。」
上総んはそう言って、目を伏せた。
「勉強会とか、あるんでしょ?ガツーンとかましてやんなさいよ。」
「……ああ、まあ、勉強会ではずっと主役を務めさせていただいてるよ、おかげさまで。」
「ほう!好評?」
「当たり前だろ。俺を誰だと思ってんの?」
意外と強気な発言じゃないか。
「ふ~ん?じゃあ、次の勉強会も楽しみにしてる。……たぶん上総んは、真ん中がふさわしいと思うよ?」
そう言ってキスしてから、私はベッドを出た。
「じゃ、帰る。また来るわ。」
「もう?……もっぺん、しよ?」
上総んがそう言って手招きする。
「やーよ。元気が有り余ってるなら、お稽古したら?」
私も帰って、院試の勉強しなきゃ。
将来のために、今、すべきことをしよう。
それぞれの場所で。
数日後、松尾教授が大笑いしながら電話を寄越した。
「もしもし?楽しそうですね。どうなさいました?」
そう聞くと、松尾教授は笑いを納めきれず、途切れ途切れに言った。
『……紫原(しはら)~、ネット見て、ネットの掲示板。上総(かずさ)丈に婚約者がいるんだってよ。』
え……。
「何ですか?それ。」
ドキドキする。
相手は、芸能人?
『何って、ほら、初日の終演後。上総丈、走って私達のところに来たでしょ?あれ、見てたヒトが、紫原のことを恋人、私は紫原の母親って勘違いしたみたい。親公認だから婚約者だろうって~~~。』
はあ?
「ずいぶんと単純なヒトが無責任な書き込みしたもんですね。しょーもない。」
吐き捨てるようにそう言ったけれど、松尾教授は真面目な声で言った。
『まあ憶測は確かにしょうもないけど、興味深い書き込みも多々あったわよ。見てみなさいよ。ふふ。』
楽しそうにそう言って、松尾教授は電話を切った。



