「ところで、上総(かずさ)んの『ぼっちゃん』、あれ、いいの?素人(しろうと)の私が見ても、やばい気がしたけど。」
あからさまに話題を変えてみた。
上総んはちょっと言い淀んだ。
「がんばってらっしゃるんだけどね。小さい頃から師匠にも奥さまにも厳しくしつけられすぎて、萎縮しちゃってるんだよな。かわいそうな人だよ。ぼっちゃん。」
上総んが心からぼっちゃんを心配して哀れんでいることが伝わってきた。
変な人。
本来なら、上総んが次の14代を継いでもおかしくないはずなのに。
「ぼっちゃんを妬(ねた)んでないの?」
上総んは、ずいっと私に顔を近づけて、じっと見つめて言った。
「全く妬んでない。恨んでもない。ね?この目、見たらわかるでしょ?むしろ、悪いな~、って思ってる。任(にん)じゃない役を背負わせてしまって。」
綺麗な瞳……。
すいこまれそう。
私もじっと見つめて、聞いてみた。
「じゃあ、代わってあげれば?上総んは、もっとできる人のような気がした。……見たことないけど。踊れるんでしょ?」
上総んは、コツンと私の額(ひたい)に自分の額をくっつけた。
「やだ。それはできない。俺はあくまで日陰の身なの。13代目の弟子。それ以上でも以下でもない。」
……なんか、もったいない、それ。
「別に上総んに有名人になってほしいわけじゃないけど……何か、違う気がする。スカウトされない?普通に街、歩いてて。」
上総んは苦笑した。
「まあ、スカウトはされるね。てか、映画やドラマ、バラエティからも出演依頼は来るよ。師匠に頼んで断ってもらってるけど。」
断ってる?
どうして?
「バレたくないから?12代目の隠し子って?」
「はは。学美は、ほんっと、歯に衣着せず、はっきり言うね。」
「理由は……ぼっちゃんを追いつめるから?」
サッと上総んの顔色が変わった。
……やっぱりそうなんだ。
「仲いいの?ぼっちゃんと。」
追及をやめて、そう聞いてみた。
「どうかな。ちっちゃい頃は優しくしてもらった。……俺と違って、本当は優しい人なんだよ。」
……うわ~~~、再び追及モードに入りたくなるわ。
何?その突っ込みどころ満載な返事は。
色々聞きたいし言いたいけど、無理矢理飲み込んだ。
「人間性はさておき、歌舞伎役者として、どうなん?かなり弱い気がしたけど。……せめてお顔が上総んぐらいよければ強みになったろうけど。あれじゃ勝ち目ないよね。」
あれ?
方向転換しても、やっぱり辛辣になっちゃった。
ま、いっか。
上総んはちょっと黙ってしまったけれど、苦しそうに言った。
「勝ち負けなんて関係ないよ。ぼっちゃんは14代目。俺は13代目の弟子。立場が違うんだよ。」
はあ!?
「何、言ってんの!?卑屈になってんじゃないわよ!」
イラッとして、ついそう怒ってしまった。
しかもペシッと、上総んの額を押しやる……というよりは、はっきり、叩いてしまった。
……あ……しまった。
怒る?
さすがに、怒る?
ドキドキして反応を待った。
あからさまに話題を変えてみた。
上総んはちょっと言い淀んだ。
「がんばってらっしゃるんだけどね。小さい頃から師匠にも奥さまにも厳しくしつけられすぎて、萎縮しちゃってるんだよな。かわいそうな人だよ。ぼっちゃん。」
上総んが心からぼっちゃんを心配して哀れんでいることが伝わってきた。
変な人。
本来なら、上総んが次の14代を継いでもおかしくないはずなのに。
「ぼっちゃんを妬(ねた)んでないの?」
上総んは、ずいっと私に顔を近づけて、じっと見つめて言った。
「全く妬んでない。恨んでもない。ね?この目、見たらわかるでしょ?むしろ、悪いな~、って思ってる。任(にん)じゃない役を背負わせてしまって。」
綺麗な瞳……。
すいこまれそう。
私もじっと見つめて、聞いてみた。
「じゃあ、代わってあげれば?上総んは、もっとできる人のような気がした。……見たことないけど。踊れるんでしょ?」
上総んは、コツンと私の額(ひたい)に自分の額をくっつけた。
「やだ。それはできない。俺はあくまで日陰の身なの。13代目の弟子。それ以上でも以下でもない。」
……なんか、もったいない、それ。
「別に上総んに有名人になってほしいわけじゃないけど……何か、違う気がする。スカウトされない?普通に街、歩いてて。」
上総んは苦笑した。
「まあ、スカウトはされるね。てか、映画やドラマ、バラエティからも出演依頼は来るよ。師匠に頼んで断ってもらってるけど。」
断ってる?
どうして?
「バレたくないから?12代目の隠し子って?」
「はは。学美は、ほんっと、歯に衣着せず、はっきり言うね。」
「理由は……ぼっちゃんを追いつめるから?」
サッと上総んの顔色が変わった。
……やっぱりそうなんだ。
「仲いいの?ぼっちゃんと。」
追及をやめて、そう聞いてみた。
「どうかな。ちっちゃい頃は優しくしてもらった。……俺と違って、本当は優しい人なんだよ。」
……うわ~~~、再び追及モードに入りたくなるわ。
何?その突っ込みどころ満載な返事は。
色々聞きたいし言いたいけど、無理矢理飲み込んだ。
「人間性はさておき、歌舞伎役者として、どうなん?かなり弱い気がしたけど。……せめてお顔が上総んぐらいよければ強みになったろうけど。あれじゃ勝ち目ないよね。」
あれ?
方向転換しても、やっぱり辛辣になっちゃった。
ま、いっか。
上総んはちょっと黙ってしまったけれど、苦しそうに言った。
「勝ち負けなんて関係ないよ。ぼっちゃんは14代目。俺は13代目の弟子。立場が違うんだよ。」
はあ!?
「何、言ってんの!?卑屈になってんじゃないわよ!」
イラッとして、ついそう怒ってしまった。
しかもペシッと、上総んの額を押しやる……というよりは、はっきり、叩いてしまった。
……あ……しまった。
怒る?
さすがに、怒る?
ドキドキして反応を待った。



