「かわいい。学美、ほんと、かわいい。」
何度もそう言って、上総さんは私の心をぐにゃぐにゃに溶かしてしまった。
「俺のモンにする。」
飛び込んだシティホテルのベッドでそんな風に言われるだけで、身体が悦びに打ち震えた。
でも、少し抵抗も感じた。
どうせ、すぐ飽きて捨てるくせに。
「……嫌。私は誰の所有物にもならへん。」
そう言ってから、上総さんの目を見据えて言った。
「経験ないし、痩せてあばら骨とかすごいから、抱いてもおもしろくないと思う。それでもよければ、どうぞ。」
驚いたように目を見張ってから、上総さんはクッと笑った。
「そうだね。どこもかしこも細すぎて骨が出てて、抱き心地悪いね。」
自分で言ったんだけど、改めてそう言われると、ムッとした。
「でも、意外とおっぱいはおっきい。充分楽しめるよ。」
……なんか、最低。
既に私は後悔していた。
こいつの一夜の楽しみのために、自分の身体を提供するのか……。
こんな……下っ端の歌舞伎役者ふぜいの、慰みものになるのか……。
身体が勝手に震えた。
上総さんが慌てて、私を抱きしめた。
「嘘!ごめん!そんなつもりない。……本当に、好きなんだ。大事にしたい、って思ってる。ずっと。」
ずっと?
……ずっと、って、いつまで?
一ヶ月?半年?一年?
「……これでも、俺、けっこう傷ついてるんだよ、学美の言葉きついから。……だから、ついイケズ言ってしまった。ごめん。」
そう言って、上総さんは私の髪を撫でて、何度もキスした。
「信じてほしい。遊びじゃないって。本当に、大事に想ってるってこと。」
……どうせ、今だけでしょ。
信じられない。
信じたくない。
信じて、裏切られたくない。
どうして、はじめて好きだと思えたヒトが、芸能人なんだろう。
普通の、釣り合いの取れる普通の男がよかった。
最初から永遠を望めない相手。
……刹那的な恋愛に身を投じるには……私はあまりにも臆病だった。
9月に入ると、大阪で歌舞伎の公演が始まった。
いつの間にかチケットを買ってらした松尾教授に連れられて、初日の夜の部を観劇した。
「京都と違って、ちょっと広いんですね。」
「ん?紫原(しはら)、ココははじめて?……まあ、京都に比べれば広いわね。ちょっと。」
私は、京都の12月の顔見世しか見たことがない。
それも、高校から昼の部を見に行ったのと、大学で補助金の下りるのを利用して……合計4度。
「ちなみに一階席もはじめて、です。」
「なるほど。それでがんばって着物なのね。よく似合ってる。メークも。自分でやったんでしょ?媚びない紫原らしい顔になってる。」
媚びない!
そう……そうか。
祇園のおかあさんのメークを教わりたいと思ったのは、和化粧って言うより、スッとした男に媚びない美人さんに憧れたからなんだわ。
何度もそう言って、上総さんは私の心をぐにゃぐにゃに溶かしてしまった。
「俺のモンにする。」
飛び込んだシティホテルのベッドでそんな風に言われるだけで、身体が悦びに打ち震えた。
でも、少し抵抗も感じた。
どうせ、すぐ飽きて捨てるくせに。
「……嫌。私は誰の所有物にもならへん。」
そう言ってから、上総さんの目を見据えて言った。
「経験ないし、痩せてあばら骨とかすごいから、抱いてもおもしろくないと思う。それでもよければ、どうぞ。」
驚いたように目を見張ってから、上総さんはクッと笑った。
「そうだね。どこもかしこも細すぎて骨が出てて、抱き心地悪いね。」
自分で言ったんだけど、改めてそう言われると、ムッとした。
「でも、意外とおっぱいはおっきい。充分楽しめるよ。」
……なんか、最低。
既に私は後悔していた。
こいつの一夜の楽しみのために、自分の身体を提供するのか……。
こんな……下っ端の歌舞伎役者ふぜいの、慰みものになるのか……。
身体が勝手に震えた。
上総さんが慌てて、私を抱きしめた。
「嘘!ごめん!そんなつもりない。……本当に、好きなんだ。大事にしたい、って思ってる。ずっと。」
ずっと?
……ずっと、って、いつまで?
一ヶ月?半年?一年?
「……これでも、俺、けっこう傷ついてるんだよ、学美の言葉きついから。……だから、ついイケズ言ってしまった。ごめん。」
そう言って、上総さんは私の髪を撫でて、何度もキスした。
「信じてほしい。遊びじゃないって。本当に、大事に想ってるってこと。」
……どうせ、今だけでしょ。
信じられない。
信じたくない。
信じて、裏切られたくない。
どうして、はじめて好きだと思えたヒトが、芸能人なんだろう。
普通の、釣り合いの取れる普通の男がよかった。
最初から永遠を望めない相手。
……刹那的な恋愛に身を投じるには……私はあまりにも臆病だった。
9月に入ると、大阪で歌舞伎の公演が始まった。
いつの間にかチケットを買ってらした松尾教授に連れられて、初日の夜の部を観劇した。
「京都と違って、ちょっと広いんですね。」
「ん?紫原(しはら)、ココははじめて?……まあ、京都に比べれば広いわね。ちょっと。」
私は、京都の12月の顔見世しか見たことがない。
それも、高校から昼の部を見に行ったのと、大学で補助金の下りるのを利用して……合計4度。
「ちなみに一階席もはじめて、です。」
「なるほど。それでがんばって着物なのね。よく似合ってる。メークも。自分でやったんでしょ?媚びない紫原らしい顔になってる。」
媚びない!
そう……そうか。
祇園のおかあさんのメークを教わりたいと思ったのは、和化粧って言うより、スッとした男に媚びない美人さんに憧れたからなんだわ。



