女将さんが、湯飲みに白濁したスープをと塩を入れて飲ませてくださった。
濃厚な鶏のスープはものすごく美味しくて、びっくりした。
「美味しい〜〜〜〜!え?これ、もっと飲んでいいんですか?」
女将は艶然とほほ笑みうなずいてくださった。
やった!
これなら、いくらでも飲めそうな気がした。
「酒はやめとこうか。学美が強いのはよくわかってるけど……酒は胃を荒らすから。まずは胃腸のケアからだな。」
そう言って、上総さんは私の手をそっと握った。
「……指まで痩せてる。そんなにがんばらなくてよかったのに。」
胸が、ざわざわと騒ぎ出す。
「だって……紹介してくださった、おかあさんの顔、つぶしたくないし……なんか、むかついたんだもん。雇い先の旅館の女将が、いけず〜で。」
ときめきを隠してそう言った。
上総さんが苦笑する。
「ああ、それな。……あのヒトも元芸妓で、まあ、昔からきついヒトやな、うん。」
含みのある言い方。
もしかして、上総さんと関係したことあるのかしら……歳、けっこう離れてるけど……あり得る……。
「それにしても……」
と、再び、上総さんの手が私の頬に触れた。
「痛々しいほど痩せちゃったね。がんばって和化粧、綺麗にしてるのに。……いじらしくて、愛しくて……参った。」
参った?
何か、変じゃない?それ。
「この一ヶ月、学美はツンデレかと思ってたけど……もしかしてヤンデレか?」
「……知らない。」
認めたくないけど、そうかもしれない。
てか、もともと、心身共にしんどくなるとご飯が食べられないだけなんだけど……それ自体が現代では「心身症」らしいので、そういう新語で表すなら「ヤンデレ」が近いのかもしれない。
「なるほどなあ。松尾先生が遊び相手に向かないって言ってたわけだ。うん。」
上総さんはそう言って、私を自分の胸に抱き寄せた。
でえええええ!?
恥ずかしいんですけど!
ここは個室じゃない……店の中ですらない。
ものすごーく見晴らしのいい、鴨川に面した床の上。
少し離れた座卓には他のお客さん達もいるし、仲居さん達だってウロウロしてる。
じたばたする私に、上総さんは囁いた。
「もうちょっとだけ。一ヶ月、長かった〜。ずっと学美に逢いたかった。学美は?」
「……馬鹿ぁ。もう、やだ。恥ずかしい。離して。」
泣きそう。
でも上総さんは離してくれなかった。
「だぁめ!ちゃんと言って。逢いたかった?」
もう!
言わせるな!
言わなくてもわかれ!馬鹿!
誰のために、やりたくない化粧を練習して、嫌味な雇い主の下でバイト続けたか……わかってるくせに。
「いけず……。」
そう言って、私は上総さんの胸にぐりぐりと頭をこすりつけた。
せっかくの化粧もヘアも乱れたと思うけど……どうでもいいや。
「……ずるい。ほんと、ずるい。どうせ逢えないなら、ほっといてくれたらすぐ忘れるのに、毎晩電話してくるから……待たんとしょうがないやんか……」
素直じゃないながらも、自分比では、がんばれたほうだと思う。
上総さんにもちゃんと伝わったのかな。
やっと私を捉えていた腕の力が抜けた。
ホッとして顔を上げたら……上総さんのお顔が降りてきた。
ココでキス!?
一瞬慌てたけど、漆黒の瞳に私の視線も意識も吸い込まれていく。
周囲が気にならなくなった。
静かに、唇が重なった。
体中に電流が流れた気がした。
……本当に、私はこの時を待っていたのかもしれない。
濃厚な鶏のスープはものすごく美味しくて、びっくりした。
「美味しい〜〜〜〜!え?これ、もっと飲んでいいんですか?」
女将は艶然とほほ笑みうなずいてくださった。
やった!
これなら、いくらでも飲めそうな気がした。
「酒はやめとこうか。学美が強いのはよくわかってるけど……酒は胃を荒らすから。まずは胃腸のケアからだな。」
そう言って、上総さんは私の手をそっと握った。
「……指まで痩せてる。そんなにがんばらなくてよかったのに。」
胸が、ざわざわと騒ぎ出す。
「だって……紹介してくださった、おかあさんの顔、つぶしたくないし……なんか、むかついたんだもん。雇い先の旅館の女将が、いけず〜で。」
ときめきを隠してそう言った。
上総さんが苦笑する。
「ああ、それな。……あのヒトも元芸妓で、まあ、昔からきついヒトやな、うん。」
含みのある言い方。
もしかして、上総さんと関係したことあるのかしら……歳、けっこう離れてるけど……あり得る……。
「それにしても……」
と、再び、上総さんの手が私の頬に触れた。
「痛々しいほど痩せちゃったね。がんばって和化粧、綺麗にしてるのに。……いじらしくて、愛しくて……参った。」
参った?
何か、変じゃない?それ。
「この一ヶ月、学美はツンデレかと思ってたけど……もしかしてヤンデレか?」
「……知らない。」
認めたくないけど、そうかもしれない。
てか、もともと、心身共にしんどくなるとご飯が食べられないだけなんだけど……それ自体が現代では「心身症」らしいので、そういう新語で表すなら「ヤンデレ」が近いのかもしれない。
「なるほどなあ。松尾先生が遊び相手に向かないって言ってたわけだ。うん。」
上総さんはそう言って、私を自分の胸に抱き寄せた。
でえええええ!?
恥ずかしいんですけど!
ここは個室じゃない……店の中ですらない。
ものすごーく見晴らしのいい、鴨川に面した床の上。
少し離れた座卓には他のお客さん達もいるし、仲居さん達だってウロウロしてる。
じたばたする私に、上総さんは囁いた。
「もうちょっとだけ。一ヶ月、長かった〜。ずっと学美に逢いたかった。学美は?」
「……馬鹿ぁ。もう、やだ。恥ずかしい。離して。」
泣きそう。
でも上総さんは離してくれなかった。
「だぁめ!ちゃんと言って。逢いたかった?」
もう!
言わせるな!
言わなくてもわかれ!馬鹿!
誰のために、やりたくない化粧を練習して、嫌味な雇い主の下でバイト続けたか……わかってるくせに。
「いけず……。」
そう言って、私は上総さんの胸にぐりぐりと頭をこすりつけた。
せっかくの化粧もヘアも乱れたと思うけど……どうでもいいや。
「……ずるい。ほんと、ずるい。どうせ逢えないなら、ほっといてくれたらすぐ忘れるのに、毎晩電話してくるから……待たんとしょうがないやんか……」
素直じゃないながらも、自分比では、がんばれたほうだと思う。
上総さんにもちゃんと伝わったのかな。
やっと私を捉えていた腕の力が抜けた。
ホッとして顔を上げたら……上総さんのお顔が降りてきた。
ココでキス!?
一瞬慌てたけど、漆黒の瞳に私の視線も意識も吸い込まれていく。
周囲が気にならなくなった。
静かに、唇が重なった。
体中に電流が流れた気がした。
……本当に、私はこの時を待っていたのかもしれない。



