「じゃあね。松尾先生と!峠(とうげ)くんによろしく。」
ひらひらと指を動かして手を振る上総さんに見送られて、お茶屋さんを出た。
……今日も暑くなりそうだ。
まだ9時前なのに、どこまでも青い空と、強い日差し、むわっと湿気の強い熱気。
あっという間にお化粧は汗で剥げてしまうだろう。
せっかく上総さんがしてくれたのに。
……白い細い指の感触を思い出すと、何となくドキドキした。
ぶるぶると首を振って、気を取り直す。
あと1日!
アルバイト、がんばらなきゃ!
……とりあえずは遅刻しないように、ダッシュ!
「紫原(しはら)……あんた……」
ホテルに戻ると、既にほとんどの学生さんが揃っていた。
松尾教授と野田教授に挨拶しに行くと、2人がめちゃめちゃ驚いた顔で私を見た。
「え?」
わけがわからず、私も驚いた。
「や〜〜〜、紫原くん、君、絶対!普段から化粧すべきだよ!別人!なかなかいない美人さんじゃないか。びっくりしたよ。」
野田教授の興奮っぷりに、私はやっと理解した。
上総(かずさ)さんがメークを施した私の顔は、確かにどこのお姫さま?ってぐらいキラキラ美人に化けていたんだっけ。
市役所前の観覧席へと向かう道中、松尾教授に根掘り葉掘り事情聴取された。
「ヤッてません。ちゃんと帰宅しました。」
繰り返しそう言うのだけど、松尾教授は納得してくれなかった。
「部屋まで行って?」
「その顔、紫原には無理でしょ?」
「じゃ、次の約束取り付けた?いつ会うの?」
……相手は世話になってる、卒論の担当教授だけど……さすがにうんざりした。
「もう!何も決まってません!このままフェードアウトでしょ!?普通。」
松尾教授は首をかしげた。
「うーん。。。いつもの紫原なら、そうかもって思うけど、その顔見てしまうとねえ……上総丈、ほっとかないでしょ。」
「……虚構ですよ、こんなの。」
そう言いながらも、私はメークを甘く見ていたことを実感していた。
ここまでイメージが変わるとは。
確かに、私は化粧映えするらしい。
でも、それ以上に上総さんの腕の確かなこと。
今も、周囲の人がみんな、ハッとして振り返る。
ものすごく、いたたまれない。
祇園祭の後の祭の鉾巡行は、お昼前に終わった。
やっぱり、2つに分けると早い。
これはこれでいいかもしれない……盛り上がりに欠ける気もするけど、まあ、京都のお祭りだから。
東京からの巡検御一行様は、二泊三日の行程を全て終えた。
参加した学生は無事に全員単位をもらえるらしい。
……歌舞伎の舞台解説をさぼった峠くんもバレてないようで、よかった。
観光客でごった返す京都駅で解散したあと、
「紫原くん?専門は、茶道具だって?」
松尾教授から聞いたらしく、野田教授がそう話し掛けてきた。
「はい!ですから野田先生に色々お話をうかがいたかったのですが……」
「そうなの?早く言ってくれればいいのに。」
鼻の下、のびてますよ。
なんか、女の武器を使ってる気分でうんざりしてくる。
「じゃあさ、秋の研究会で発表するから、聞きに来なさい。その時に、卒論もみてやろう。」
野田教授はそう言って胸を張った。
……うわぁ……やっぱり、このおっさん、苦手。
作り笑いも引きつるわ。
「ありがとうございます。よろしくお願いします。」
頭を下げてごまかして、笑顔を作り直して、顔を上げた。
ひらひらと指を動かして手を振る上総さんに見送られて、お茶屋さんを出た。
……今日も暑くなりそうだ。
まだ9時前なのに、どこまでも青い空と、強い日差し、むわっと湿気の強い熱気。
あっという間にお化粧は汗で剥げてしまうだろう。
せっかく上総さんがしてくれたのに。
……白い細い指の感触を思い出すと、何となくドキドキした。
ぶるぶると首を振って、気を取り直す。
あと1日!
アルバイト、がんばらなきゃ!
……とりあえずは遅刻しないように、ダッシュ!
「紫原(しはら)……あんた……」
ホテルに戻ると、既にほとんどの学生さんが揃っていた。
松尾教授と野田教授に挨拶しに行くと、2人がめちゃめちゃ驚いた顔で私を見た。
「え?」
わけがわからず、私も驚いた。
「や〜〜〜、紫原くん、君、絶対!普段から化粧すべきだよ!別人!なかなかいない美人さんじゃないか。びっくりしたよ。」
野田教授の興奮っぷりに、私はやっと理解した。
上総(かずさ)さんがメークを施した私の顔は、確かにどこのお姫さま?ってぐらいキラキラ美人に化けていたんだっけ。
市役所前の観覧席へと向かう道中、松尾教授に根掘り葉掘り事情聴取された。
「ヤッてません。ちゃんと帰宅しました。」
繰り返しそう言うのだけど、松尾教授は納得してくれなかった。
「部屋まで行って?」
「その顔、紫原には無理でしょ?」
「じゃ、次の約束取り付けた?いつ会うの?」
……相手は世話になってる、卒論の担当教授だけど……さすがにうんざりした。
「もう!何も決まってません!このままフェードアウトでしょ!?普通。」
松尾教授は首をかしげた。
「うーん。。。いつもの紫原なら、そうかもって思うけど、その顔見てしまうとねえ……上総丈、ほっとかないでしょ。」
「……虚構ですよ、こんなの。」
そう言いながらも、私はメークを甘く見ていたことを実感していた。
ここまでイメージが変わるとは。
確かに、私は化粧映えするらしい。
でも、それ以上に上総さんの腕の確かなこと。
今も、周囲の人がみんな、ハッとして振り返る。
ものすごく、いたたまれない。
祇園祭の後の祭の鉾巡行は、お昼前に終わった。
やっぱり、2つに分けると早い。
これはこれでいいかもしれない……盛り上がりに欠ける気もするけど、まあ、京都のお祭りだから。
東京からの巡検御一行様は、二泊三日の行程を全て終えた。
参加した学生は無事に全員単位をもらえるらしい。
……歌舞伎の舞台解説をさぼった峠くんもバレてないようで、よかった。
観光客でごった返す京都駅で解散したあと、
「紫原くん?専門は、茶道具だって?」
松尾教授から聞いたらしく、野田教授がそう話し掛けてきた。
「はい!ですから野田先生に色々お話をうかがいたかったのですが……」
「そうなの?早く言ってくれればいいのに。」
鼻の下、のびてますよ。
なんか、女の武器を使ってる気分でうんざりしてくる。
「じゃあさ、秋の研究会で発表するから、聞きに来なさい。その時に、卒論もみてやろう。」
野田教授はそう言って胸を張った。
……うわぁ……やっぱり、このおっさん、苦手。
作り笑いも引きつるわ。
「ありがとうございます。よろしくお願いします。」
頭を下げてごまかして、笑顔を作り直して、顔を上げた。



