例えば、ゼミ発表の準備で徹夜が続いてふらふら状態のまま受けた面接で、「顔色が悪いですね」と聞かれて「眠れなくて」とだけ答えたら、普通は不眠症だと思われるだろう!?
他にも、「研究以外で一番興味があることは?」と聞かれて「料理人」って! ……せめて「料理」で止めて置いてほしかった。
あと、東北にボランティアに行ってた話を聞かれて、意気揚々と原発被害の惨状を語ったのよね……その自治体にも原発があることを知らずに。
野田先生だけじゃなく、中野大先生までが声をあげて大笑いされた。
「まあ、一次試験を通ってるなら、そのうち面接慣れすれば採用されるでしょうけど……公立がいいの?企業美術館でよければイイ話があるわよ。」
峠くんよりも私が喰いついた。
「是非!どこですか?」
「場所は京都。主な所蔵品は花鳥風月の軸、屏風、襖絵、着物。」
松尾先生の言葉に、今度は峠くんの目がキラキラと輝いた。
たぶん今まで見た中で、一番の輝きだ。
……そういえば、峠くん、ず~っと「京都がいい」って言ってたもんね。
加倉とも逢いやすくなるし、専門もバッチリだし……うん、いいお話だわ。
「先代・先々代会長の個人所蔵品で、状態がかなり悪いらしいから修復もできる峠くんは有利かも。ね?」
松尾先生は、中野大先生にそう確認をとった。
中野大先生はニコニコとうなずかれた。
「ただ、来年の4月採用だから、修論を書きながらの就職になるけどね。どう?峠くん?……かまわない?紫原。」
「何で私に聞くんですか。」
峠くんがこんなに喜んでるのに、私に異存があるわけない。
「ふうん?あんたの就職先が決まってないから、やきもち焼くんじゃないかと思ってたんだけど、そうでもないのね。」
松尾先生は少し口をとがらせた。
「つまんない子!結婚して尖った所がなくなっちゃったわね。」
……そうかもしれない。
「いいじゃないか。紫原さん、幸せなんですね。穏やかで、優秀で、イイヒトとご結婚されたのですね。」
中野大先生がそんな風に仰ってくださって、涙がこみあげてきた。
「はい。」
私がそう返事して隣りを見ると、峠くんは私より先にホロホロと涙をこぼしていた。
松尾先生は唖然としていたけれど、私はうれしくて愛しくて幸せいっぱいになった。
……そう。
結婚してから気づいたけど、峠くんと私は、心が共鳴し合うらしい。
うれしいことも悲しいことも、同じ気持ちで寄り添えるヒト。
多少鈍くさくても、おっとりしすぎてても、峠くんの全てが好き。
心から、愛してる。
…………………………………………………………………………………………………………
「いや、マジで心から愛してるけどさ。……何で、そう鈍くさいの?信じらんない!普通、修論の締切に遅れるか!?」
院浪、1年間の休学を経て、私よりも3学年遅れてる峠くんは、とっくにでき上がっていた修論の提出時間に間に合わないという大失態を演じた。
他にも、「研究以外で一番興味があることは?」と聞かれて「料理人」って! ……せめて「料理」で止めて置いてほしかった。
あと、東北にボランティアに行ってた話を聞かれて、意気揚々と原発被害の惨状を語ったのよね……その自治体にも原発があることを知らずに。
野田先生だけじゃなく、中野大先生までが声をあげて大笑いされた。
「まあ、一次試験を通ってるなら、そのうち面接慣れすれば採用されるでしょうけど……公立がいいの?企業美術館でよければイイ話があるわよ。」
峠くんよりも私が喰いついた。
「是非!どこですか?」
「場所は京都。主な所蔵品は花鳥風月の軸、屏風、襖絵、着物。」
松尾先生の言葉に、今度は峠くんの目がキラキラと輝いた。
たぶん今まで見た中で、一番の輝きだ。
……そういえば、峠くん、ず~っと「京都がいい」って言ってたもんね。
加倉とも逢いやすくなるし、専門もバッチリだし……うん、いいお話だわ。
「先代・先々代会長の個人所蔵品で、状態がかなり悪いらしいから修復もできる峠くんは有利かも。ね?」
松尾先生は、中野大先生にそう確認をとった。
中野大先生はニコニコとうなずかれた。
「ただ、来年の4月採用だから、修論を書きながらの就職になるけどね。どう?峠くん?……かまわない?紫原。」
「何で私に聞くんですか。」
峠くんがこんなに喜んでるのに、私に異存があるわけない。
「ふうん?あんたの就職先が決まってないから、やきもち焼くんじゃないかと思ってたんだけど、そうでもないのね。」
松尾先生は少し口をとがらせた。
「つまんない子!結婚して尖った所がなくなっちゃったわね。」
……そうかもしれない。
「いいじゃないか。紫原さん、幸せなんですね。穏やかで、優秀で、イイヒトとご結婚されたのですね。」
中野大先生がそんな風に仰ってくださって、涙がこみあげてきた。
「はい。」
私がそう返事して隣りを見ると、峠くんは私より先にホロホロと涙をこぼしていた。
松尾先生は唖然としていたけれど、私はうれしくて愛しくて幸せいっぱいになった。
……そう。
結婚してから気づいたけど、峠くんと私は、心が共鳴し合うらしい。
うれしいことも悲しいことも、同じ気持ちで寄り添えるヒト。
多少鈍くさくても、おっとりしすぎてても、峠くんの全てが好き。
心から、愛してる。
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「いや、マジで心から愛してるけどさ。……何で、そう鈍くさいの?信じらんない!普通、修論の締切に遅れるか!?」
院浪、1年間の休学を経て、私よりも3学年遅れてる峠くんは、とっくにでき上がっていた修論の提出時間に間に合わないという大失態を演じた。



