2人が、カルシウム増量メニューの相談をしてるところに、上総(かずさ)んが入って来た。
「やあ、大将、峠くん、こんばんは。外、雪が降ってるよ。」
髪や肩の雪を店の外で払って来たのだろう……少し乱れた髪が、泣きたいぐらいに色っぽかった。
「いらっしゃい。一人かい?」
「うん?うん。美子ちゃん、体調悪いみたいだし来ないんじゃないかな。」
大将にそう返事してから、やっと、上総んは私に視線を移した。
「久しぶり。元気そうだね。よかった。」
笑顔でそう言われて、涙腺が決壊した。
「お母さんのこと!聞きました!……ご愁傷様でした。」
あまりにも涙が流れるので、あわてて頭を下げた。
「あー、ごめん。連絡しなくて。……そうだ、お母さんから学美ちゃんにも遺産分与。茶道具。整理終わったら届けるから。もらってあげて。」
「そんな!いただけません!貴重なものを!お母さんには、むしろ、謝りたいのに。」
慌ててそう言った。
でも上総んは、懐からゴソゴソと取り出した封筒を、私の鰭酒の横に置いた。
「お母さんも学美ちゃんに謝ってたよ。解放したげよし、って、何度も諭された。……ごめんね。」
ダメだ。
泣きたくないのに、泣けて泣けて。
「峠くん……」
思わず、峠くんを呼んでしまった。
峠くんは、大将に会釈して、私のそばに来てくれた。
「私、」
ガチャガチャとドアを回す音が静かな店内に響いた。「貸切なのに。誰だ?」
大将のぼやきにドアを注視した。
現れたのは、美子さん。
「上総さん!」
美子さんは涙目だった。
あ、なんか、嫌な予感がする。
峠くんも勘付いたらしく、低く唸った。
たぶん美子さんの目には、上総んしか映ってないのだろう。
綺麗にお化粧をほどこしたかわいい瞳を潤ませて、ふらふらと上総んに近づいた。
上総んは、珍しくめっちゃ動揺していた。
……なるほど。
据え膳、喰っちまってるわけね。
自業自得だねー。
美子さんの恋愛劇場開幕!
峠くんも、観客に徹するべく、私の隣に座った。
こっそりと、手をつないで成り行きを見守った。
「美子ちゃん?どうしたの?泣いてる?え?」
美子さんは、どーんと上総んに抱きついた。
「わっ!」
と、上総んは、両手と声を挙げた。
告白?
付き合っちゃえ!
無責任にわくわくニヤニヤと見てると、峠くんに、めっ!と怒られた。
「美子ちゃん?落ち着いて!何?どうしたの?」
上総んの胸で泣きじゃくって、いっこうに落ち着かない美子さんに困り果てたらしく、上総んは恐る恐る両手をおろして、そう聞いた。
顔を上げて上総んを見つめる美子さんの瞳は大粒の涙でキラキラ輝いていた。
さすがのヒロイン力に、私は息を飲んだ。
「上総さん。私と、結婚してください!」
キターーーーーーーーッ!!!
峠くんと2人、吹き出し笑いを必死でこらえた。
上総んは、本気で困っていた。
たぶん、関係してしまってるため、冷たくできないのだろう。
美子さんの両肩を両手で掴んで自分から引き剥がした。
「落ち着いて。急に、どうしたの?」
上総んもな。
落ち着け。
心の中でツッコミながら、峠くんの腕に少しもたれた。
「両親に、言いました。驚かれたけど、応援する気持ちになってくれました。襲名費用も出してくれるそうです!」
ほう!?
美子さん家って、けっこう大きな会社だし、いい話だよ。
「美子ちゃん?何の話してるの?」
上総んは必死で落ち着こうとしている。
でもそんな努力もむなしく、美子さんは盛大に泣きじゃくって言った。
「妊娠しました!上総さんの子供です!私、産みますから!反対されても、産みます!けど、できたら、結婚しましょう?」
「やあ、大将、峠くん、こんばんは。外、雪が降ってるよ。」
髪や肩の雪を店の外で払って来たのだろう……少し乱れた髪が、泣きたいぐらいに色っぽかった。
「いらっしゃい。一人かい?」
「うん?うん。美子ちゃん、体調悪いみたいだし来ないんじゃないかな。」
大将にそう返事してから、やっと、上総んは私に視線を移した。
「久しぶり。元気そうだね。よかった。」
笑顔でそう言われて、涙腺が決壊した。
「お母さんのこと!聞きました!……ご愁傷様でした。」
あまりにも涙が流れるので、あわてて頭を下げた。
「あー、ごめん。連絡しなくて。……そうだ、お母さんから学美ちゃんにも遺産分与。茶道具。整理終わったら届けるから。もらってあげて。」
「そんな!いただけません!貴重なものを!お母さんには、むしろ、謝りたいのに。」
慌ててそう言った。
でも上総んは、懐からゴソゴソと取り出した封筒を、私の鰭酒の横に置いた。
「お母さんも学美ちゃんに謝ってたよ。解放したげよし、って、何度も諭された。……ごめんね。」
ダメだ。
泣きたくないのに、泣けて泣けて。
「峠くん……」
思わず、峠くんを呼んでしまった。
峠くんは、大将に会釈して、私のそばに来てくれた。
「私、」
ガチャガチャとドアを回す音が静かな店内に響いた。「貸切なのに。誰だ?」
大将のぼやきにドアを注視した。
現れたのは、美子さん。
「上総さん!」
美子さんは涙目だった。
あ、なんか、嫌な予感がする。
峠くんも勘付いたらしく、低く唸った。
たぶん美子さんの目には、上総んしか映ってないのだろう。
綺麗にお化粧をほどこしたかわいい瞳を潤ませて、ふらふらと上総んに近づいた。
上総んは、珍しくめっちゃ動揺していた。
……なるほど。
据え膳、喰っちまってるわけね。
自業自得だねー。
美子さんの恋愛劇場開幕!
峠くんも、観客に徹するべく、私の隣に座った。
こっそりと、手をつないで成り行きを見守った。
「美子ちゃん?どうしたの?泣いてる?え?」
美子さんは、どーんと上総んに抱きついた。
「わっ!」
と、上総んは、両手と声を挙げた。
告白?
付き合っちゃえ!
無責任にわくわくニヤニヤと見てると、峠くんに、めっ!と怒られた。
「美子ちゃん?落ち着いて!何?どうしたの?」
上総んの胸で泣きじゃくって、いっこうに落ち着かない美子さんに困り果てたらしく、上総んは恐る恐る両手をおろして、そう聞いた。
顔を上げて上総んを見つめる美子さんの瞳は大粒の涙でキラキラ輝いていた。
さすがのヒロイン力に、私は息を飲んだ。
「上総さん。私と、結婚してください!」
キターーーーーーーーッ!!!
峠くんと2人、吹き出し笑いを必死でこらえた。
上総んは、本気で困っていた。
たぶん、関係してしまってるため、冷たくできないのだろう。
美子さんの両肩を両手で掴んで自分から引き剥がした。
「落ち着いて。急に、どうしたの?」
上総んもな。
落ち着け。
心の中でツッコミながら、峠くんの腕に少しもたれた。
「両親に、言いました。驚かれたけど、応援する気持ちになってくれました。襲名費用も出してくれるそうです!」
ほう!?
美子さん家って、けっこう大きな会社だし、いい話だよ。
「美子ちゃん?何の話してるの?」
上総んは必死で落ち着こうとしている。
でもそんな努力もむなしく、美子さんは盛大に泣きじゃくって言った。
「妊娠しました!上総さんの子供です!私、産みますから!反対されても、産みます!けど、できたら、結婚しましょう?」



