なるほど、所蔵する美術品が項目ごとに整理された目録だ。
後ろのほうは詳細な調書!
「これ、峠くんが?」
峠くんはうなずきながらも、一つ一つの段ボールを片っ端から開けて見ていた。
すごい……。
改めて、峠くん、学芸員に向いてるわ。
個人宅にこれだけのモノがあることより、峠くんの能力に私は胸がときめいた。
ゴォ~~~ン
いきなり鐘の音が唐突に始まった。
「何?除夜の鐘?」
けっこう大きな音に驚いた。
「……ああ。同じ町内に寺があるから。11時回ったんだな。冷えた?そろそろ家に戻ろうか?風邪引いちゃ大変だ。」
峠くんはそう言ったけれど、その頃私は目録を頼りに茶道具を勝手に開けて見せてもらっていた。
「うん。そうね。……ううん、もうちょっとだけ……」
目録は、峠くんの興味と知識で、モノによって記載内容の詳細度合いが異なっていた。
茶道具は基本的なことのみだったが、それでも私には見過ごせないモノ達がゴロゴロ。
「これさ~、野田教授に見せてあげたら?手弁当で目の色変えて飛んで来るんじゃない?」
「……まなさんは?」
峠くんにそう聞かれて、私はうなずいた。
「うん。目の色変わってる。全部、調書取らせてほしい。」
「……だったら、まなさんがめぼしいのを使ってからにすれば?さすがに、野田さんが取っちゃったら、まなさん、使いづらいんじゃない?」
どうかしら、と私は首を傾げた。
「確かに報告書は早いモン勝ちやけど、私は論文に使う資料の1つとして考えてるから、別に他の誰かが報告書を出しても全然かまわないけど。」
すると、峠くんはしげしげと私を見た。
そして、やるせなく笑った。
「……だからまなさんには敵わないんだ。まなさんって、ほんと、不思議。報告書のネタも、専任講師のクチも、普通は喉から手が出るほど欲しいのに。そんなにあっさりと……。よっぽど自分に自信があるのか、欲がないのか……いや、価値観が違うのかな。」
そして、私に触れようとして、汚れた自分の手に気づいたらしく、苦笑した。
「……上総のこともね。あんなに大事にされてたのに、どうして幸せそうじゃないんだろうって、ずっと不思議だった。」
手にとっていたお茶碗を滑り落としそうになった。
慌てて箱にしまってから、ため息をついた。
「たぶん、縁がなかったのよ。松尾先生に指摘されたんだけどね、初めて会った時、本当に惹かれ合ってたのは私と峠くんだったんだって。でも2人とも経験不足だから上総んに流されたんだって。……今から思えば、最初から無理があったのかな、って。でなきゃ、説明つかない。と、思わない?」
我ながら、強引にこじつけたものだ。
でも、峠くんと上総んが仲良しで、私も上総んを嫌いじゃないから……何らかの決着と総括が必要な気がする。
なかったことにするには、年数が長過ぎる。
峠くんは、お馬鹿さんじゃないから簡単に騙されてはくれない。
でも、気持ちを汲んでくれたらしい。
「……上総のおかげで、まなさんと再会できた。……そう思うよ。」
と、言ってくれた。
後ろのほうは詳細な調書!
「これ、峠くんが?」
峠くんはうなずきながらも、一つ一つの段ボールを片っ端から開けて見ていた。
すごい……。
改めて、峠くん、学芸員に向いてるわ。
個人宅にこれだけのモノがあることより、峠くんの能力に私は胸がときめいた。
ゴォ~~~ン
いきなり鐘の音が唐突に始まった。
「何?除夜の鐘?」
けっこう大きな音に驚いた。
「……ああ。同じ町内に寺があるから。11時回ったんだな。冷えた?そろそろ家に戻ろうか?風邪引いちゃ大変だ。」
峠くんはそう言ったけれど、その頃私は目録を頼りに茶道具を勝手に開けて見せてもらっていた。
「うん。そうね。……ううん、もうちょっとだけ……」
目録は、峠くんの興味と知識で、モノによって記載内容の詳細度合いが異なっていた。
茶道具は基本的なことのみだったが、それでも私には見過ごせないモノ達がゴロゴロ。
「これさ~、野田教授に見せてあげたら?手弁当で目の色変えて飛んで来るんじゃない?」
「……まなさんは?」
峠くんにそう聞かれて、私はうなずいた。
「うん。目の色変わってる。全部、調書取らせてほしい。」
「……だったら、まなさんがめぼしいのを使ってからにすれば?さすがに、野田さんが取っちゃったら、まなさん、使いづらいんじゃない?」
どうかしら、と私は首を傾げた。
「確かに報告書は早いモン勝ちやけど、私は論文に使う資料の1つとして考えてるから、別に他の誰かが報告書を出しても全然かまわないけど。」
すると、峠くんはしげしげと私を見た。
そして、やるせなく笑った。
「……だからまなさんには敵わないんだ。まなさんって、ほんと、不思議。報告書のネタも、専任講師のクチも、普通は喉から手が出るほど欲しいのに。そんなにあっさりと……。よっぽど自分に自信があるのか、欲がないのか……いや、価値観が違うのかな。」
そして、私に触れようとして、汚れた自分の手に気づいたらしく、苦笑した。
「……上総のこともね。あんなに大事にされてたのに、どうして幸せそうじゃないんだろうって、ずっと不思議だった。」
手にとっていたお茶碗を滑り落としそうになった。
慌てて箱にしまってから、ため息をついた。
「たぶん、縁がなかったのよ。松尾先生に指摘されたんだけどね、初めて会った時、本当に惹かれ合ってたのは私と峠くんだったんだって。でも2人とも経験不足だから上総んに流されたんだって。……今から思えば、最初から無理があったのかな、って。でなきゃ、説明つかない。と、思わない?」
我ながら、強引にこじつけたものだ。
でも、峠くんと上総んが仲良しで、私も上総んを嫌いじゃないから……何らかの決着と総括が必要な気がする。
なかったことにするには、年数が長過ぎる。
峠くんは、お馬鹿さんじゃないから簡単に騙されてはくれない。
でも、気持ちを汲んでくれたらしい。
「……上総のおかげで、まなさんと再会できた。……そう思うよ。」
と、言ってくれた。



