「ダメ!」
慌てるお母様。
峠くんは、ちょっとムッとしたらしい。
「……まさかと思うけど、蔵に変なモン詰め込んでないよね?」
「だって!おじいさまの物、勝手に捨てるなってかずさんが言ったから……」
「ねえ、玄関先で、そんな話……。後でいいんじゃない?あの、お母様、すみません。お掃除も片付けも、やりますので。」
そう言ったけど、峠くんはため息をついた。
「……ダメだよ。まなさんにそんなことさせられない。」
お母様の目がちょっと不穏な色を帯びたのを感じた。
……こんな些細なことからも、嫁姑の確執は始まるんだなあ……と、先行きが思いやられた。
お座敷には、お父様とお兄様、そしてお兄様の彼女らしき女性が座ってらした。
「ただいま、お父さん。こちら、学美さんです。」
お父様は私を見てニコニコと目尻を下げた。
「いらっしゃい。はじめまして、学美さん。や~、まさか、一就(かずなり)がこんなに綺麗なお嬢さんを連れて来るとは。いくつになっても就職もせず、ふらふらしてるのに……本当に一就でいいんですか?」
「……まなさんは、綺麗なだけじゃなくて、優秀なんだよ。マスターで全国誌に論文が載るなんてすごいことなんだから。来年、専任講師の話も、」
「いや、それは断るから。」
慌てて、峠くんを止めた。
この場で私を褒めすぎると、お兄さんの彼女がおもしろくないんじゃないだろうか。
それに、専任講師の話は……受けないつもりだ。
「……。」
峠くんは黙って私を見た。
あ、やばい。
何か、怒られそう。
「え?じゃあ、学生結婚?一就、まだ働かないの?」
不穏な空気を察知して止めてくれたのか、単に弟に偉そうな口をききたいのか、お兄さんがそう言った。
「……生活費はバイトで。学費は奨学金と分割すれば、自活できると思う。」
お兄さんは、峠くんの返事を聞いて、鼻で笑った。
「そこまでして大学院なんか続けなくても。学美さんのためにも早く就職しないと、生活大変ですよ?ねえ?」
最後は私にそう言ってくださったけど、私は慌てて遮った。
「いえ。峠くんは働くと言ってるんですけど、私が峠くんに研究を続けて欲しいんです。峠くん、優秀なので、途中で辞めるのはもったいない。せめて修論をまとめてほしくて。」
私の言葉で、峠くんは赤くなった。
「へえ。こいつが、ねえ。」
お兄さんは懐疑的だった。
「お兄さん、何してるひと?」
夕食をいただいた後、私と峠くんは蔵の中に入り込んだ。
「……国家公務員。連れて来た彼女も同じ職場。」
あ~……納得。
「何か、ごめんね。」
別に反対されたわけでもないけど、ご家族と私達との価値観はかなりかけ離れているようだ。
峠くんは不思議そうに私を見た。
「……何で?褒めてもらって、うれしかったけど。」
「まあ、それならいいけど。で、何を探してんの?」
一応、ストーブを焚いてもらってるけど、真冬の夜の蔵の中は寒い。
白い息を弾ませて、峠くんは言った。
「……いや。探すというより……チェックしてる。残すものの目録、作らなきゃな。」
それから峠くんは私にファイルを渡した。
「何?」
「……目録。」
慌てるお母様。
峠くんは、ちょっとムッとしたらしい。
「……まさかと思うけど、蔵に変なモン詰め込んでないよね?」
「だって!おじいさまの物、勝手に捨てるなってかずさんが言ったから……」
「ねえ、玄関先で、そんな話……。後でいいんじゃない?あの、お母様、すみません。お掃除も片付けも、やりますので。」
そう言ったけど、峠くんはため息をついた。
「……ダメだよ。まなさんにそんなことさせられない。」
お母様の目がちょっと不穏な色を帯びたのを感じた。
……こんな些細なことからも、嫁姑の確執は始まるんだなあ……と、先行きが思いやられた。
お座敷には、お父様とお兄様、そしてお兄様の彼女らしき女性が座ってらした。
「ただいま、お父さん。こちら、学美さんです。」
お父様は私を見てニコニコと目尻を下げた。
「いらっしゃい。はじめまして、学美さん。や~、まさか、一就(かずなり)がこんなに綺麗なお嬢さんを連れて来るとは。いくつになっても就職もせず、ふらふらしてるのに……本当に一就でいいんですか?」
「……まなさんは、綺麗なだけじゃなくて、優秀なんだよ。マスターで全国誌に論文が載るなんてすごいことなんだから。来年、専任講師の話も、」
「いや、それは断るから。」
慌てて、峠くんを止めた。
この場で私を褒めすぎると、お兄さんの彼女がおもしろくないんじゃないだろうか。
それに、専任講師の話は……受けないつもりだ。
「……。」
峠くんは黙って私を見た。
あ、やばい。
何か、怒られそう。
「え?じゃあ、学生結婚?一就、まだ働かないの?」
不穏な空気を察知して止めてくれたのか、単に弟に偉そうな口をききたいのか、お兄さんがそう言った。
「……生活費はバイトで。学費は奨学金と分割すれば、自活できると思う。」
お兄さんは、峠くんの返事を聞いて、鼻で笑った。
「そこまでして大学院なんか続けなくても。学美さんのためにも早く就職しないと、生活大変ですよ?ねえ?」
最後は私にそう言ってくださったけど、私は慌てて遮った。
「いえ。峠くんは働くと言ってるんですけど、私が峠くんに研究を続けて欲しいんです。峠くん、優秀なので、途中で辞めるのはもったいない。せめて修論をまとめてほしくて。」
私の言葉で、峠くんは赤くなった。
「へえ。こいつが、ねえ。」
お兄さんは懐疑的だった。
「お兄さん、何してるひと?」
夕食をいただいた後、私と峠くんは蔵の中に入り込んだ。
「……国家公務員。連れて来た彼女も同じ職場。」
あ~……納得。
「何か、ごめんね。」
別に反対されたわけでもないけど、ご家族と私達との価値観はかなりかけ離れているようだ。
峠くんは不思議そうに私を見た。
「……何で?褒めてもらって、うれしかったけど。」
「まあ、それならいいけど。で、何を探してんの?」
一応、ストーブを焚いてもらってるけど、真冬の夜の蔵の中は寒い。
白い息を弾ませて、峠くんは言った。
「……いや。探すというより……チェックしてる。残すものの目録、作らなきゃな。」
それから峠くんは私にファイルを渡した。
「何?」
「……目録。」



