「……ごめん。正月早々バタバタさせるけど、いい話なんだ。夜のバイトと比べたら、拘束時間は半分で、金額は2倍だから。夜減らしても、これなら働きながら修論書けるし、金も溜まる。」
グッと峠くんの胸を押して、離れた。
「芸能人って、誰?男?……女じゃないでしょーね!?」
峠くんは、首を傾げた。
「……さあ?聞いてない。でも、条件が秘密厳守だから、けっこうな有名人なのかもね。」
「えー。あやしい!不倫か、隠し子でもいるヒトなんちゃう?」
「……まなさん。あんまりそんなことばっかり言ってたらダメだよ。品性を疑われるよ。」
峠くんに、やんわりと怒られた。
夕方、峠くんが帰ってくるのを待って、東京駅へと向かった。
「で?誰やった?男?女?」
「……両方。」
峠くんはそう言って首をかしげた。
「なに?夫婦?同棲?だれー?」
「……見覚えある気はするんだけど、よく考えたら、俺、芸能人に興味ないからわからなくて。髪の長い金髪の男と受験生の女の子。」
受験生?
兄妹?
親子?
てか、長い金髪って、三輪さんしか思い浮かばないや。
「……2人ともイイヒトで安心したよ。」
結局、よくわからない。
峠くんの実家は、旧士族、藩の老中職も勤めた家だった。
歴代藩主と親しかったせいか、自宅の蔵にけっこうな美術品が存在するそうだ。
土用のたびに虫干しする習慣のせいで、峠くんは本物の美術品や書状に昔から触れてきたらしい。
それで美術品が好きなのかぁ。
てか、蔵のある家?
どーん!
案内された家は、住宅地に突如としてあらわれた、豪族の家のようだ。
ぐるりと生け垣が囲った広い敷地には、大きな池とよく手入れされた日本庭園、蔵!母屋!離れ!茶室!
「お茶室!お茶室!」
思わずテンションが上がった。
「……うん。亡くなった祖母の道楽。今は誰も使ってないけど。」
玄関先で峠くんは、さらっと言った。
「……そう言えば、茶道具もけっこうあるけど、軸しか虫干ししてないな。黴(か)びてるかも。」
「嘘ー!いつから?かび臭いお茶碗とか、やだー。もったいないって!」
「……茶碗は簡単だよ。黴びてたらオーブンで焼けばいいんだから。問題は、漆を塗ってない木地モノだな。」
オーブン?
なんか、すごいこと言ってる。
「……萩焼きなんかすぐ黴びるからね。」
峠くんはそんなことを言いながら玄関を開けた。
「おかえりなさい、かずさん。はじめまして、学美さん。一就(かずなり)の母です。よろしくお願いします。」
出てきたお母様は玄関先できちっと座って手をついて、そう挨拶された。
さすが峠くんのお母様。
綺麗なヒト。
私も頭を下げたけど、正直なところ、「かずさん」にはドキッとした。
上総んと峠くんが同じ名前ってことは最初からわかってたけど、お母様が峠くんを「かずさん」と呼ぶとは思わなかった。
不意打ちをくらった気分。
「……ただいま。茶室の茶器って、虫干ししてないよね?」
「いきなり、なぁに?してないわよ。畳や壁がカビないように、たまに開けるだけ。……ちょっと?学美さん達がいらっしゃるから、家中ピカピカに掃除したんだけど、茶室は手を付けてないわよ!?やめてよ?」
お母様がめっちゃ慌ててそう仰ってるのに、峠くんは無情に言ってのけた。
「……むしろまなさんに見せたいのは、茶室と蔵だよ。」
グッと峠くんの胸を押して、離れた。
「芸能人って、誰?男?……女じゃないでしょーね!?」
峠くんは、首を傾げた。
「……さあ?聞いてない。でも、条件が秘密厳守だから、けっこうな有名人なのかもね。」
「えー。あやしい!不倫か、隠し子でもいるヒトなんちゃう?」
「……まなさん。あんまりそんなことばっかり言ってたらダメだよ。品性を疑われるよ。」
峠くんに、やんわりと怒られた。
夕方、峠くんが帰ってくるのを待って、東京駅へと向かった。
「で?誰やった?男?女?」
「……両方。」
峠くんはそう言って首をかしげた。
「なに?夫婦?同棲?だれー?」
「……見覚えある気はするんだけど、よく考えたら、俺、芸能人に興味ないからわからなくて。髪の長い金髪の男と受験生の女の子。」
受験生?
兄妹?
親子?
てか、長い金髪って、三輪さんしか思い浮かばないや。
「……2人ともイイヒトで安心したよ。」
結局、よくわからない。
峠くんの実家は、旧士族、藩の老中職も勤めた家だった。
歴代藩主と親しかったせいか、自宅の蔵にけっこうな美術品が存在するそうだ。
土用のたびに虫干しする習慣のせいで、峠くんは本物の美術品や書状に昔から触れてきたらしい。
それで美術品が好きなのかぁ。
てか、蔵のある家?
どーん!
案内された家は、住宅地に突如としてあらわれた、豪族の家のようだ。
ぐるりと生け垣が囲った広い敷地には、大きな池とよく手入れされた日本庭園、蔵!母屋!離れ!茶室!
「お茶室!お茶室!」
思わずテンションが上がった。
「……うん。亡くなった祖母の道楽。今は誰も使ってないけど。」
玄関先で峠くんは、さらっと言った。
「……そう言えば、茶道具もけっこうあるけど、軸しか虫干ししてないな。黴(か)びてるかも。」
「嘘ー!いつから?かび臭いお茶碗とか、やだー。もったいないって!」
「……茶碗は簡単だよ。黴びてたらオーブンで焼けばいいんだから。問題は、漆を塗ってない木地モノだな。」
オーブン?
なんか、すごいこと言ってる。
「……萩焼きなんかすぐ黴びるからね。」
峠くんはそんなことを言いながら玄関を開けた。
「おかえりなさい、かずさん。はじめまして、学美さん。一就(かずなり)の母です。よろしくお願いします。」
出てきたお母様は玄関先できちっと座って手をついて、そう挨拶された。
さすが峠くんのお母様。
綺麗なヒト。
私も頭を下げたけど、正直なところ、「かずさん」にはドキッとした。
上総んと峠くんが同じ名前ってことは最初からわかってたけど、お母様が峠くんを「かずさん」と呼ぶとは思わなかった。
不意打ちをくらった気分。
「……ただいま。茶室の茶器って、虫干ししてないよね?」
「いきなり、なぁに?してないわよ。畳や壁がカビないように、たまに開けるだけ。……ちょっと?学美さん達がいらっしゃるから、家中ピカピカに掃除したんだけど、茶室は手を付けてないわよ!?やめてよ?」
お母様がめっちゃ慌ててそう仰ってるのに、峠くんは無情に言ってのけた。
「……むしろまなさんに見せたいのは、茶室と蔵だよ。」



