「上総(かずさ)、焦ってるんだろな。かわいそうだけど、しょうがねーよ。まあでもそのうちあきらめるだろ。」
峠くんと一緒に加倉を東京駅まで見送りに行った。
加倉は、新幹線に乗る前にこう言った。
「紫原。我慢するな。俺と違って、上総も峠も、お前のワガママは何でも聞くから、無理せず好きに生きろ。二股だろうが気にするな。」
「やだ。気にする。裏切りたくない。」
そう言う私の両肩に、峠くんの両手の熱が心地よかった。
「ばーか。今のお前、自分自身を裏切ってるようなもんじゃん。」
涙が、ぶわっとこみ上げてきた。
「峠。紫原のこと、頼む。」
最後にそう言い残して、加倉は行ってしまった。
峠くんに支えてもらって歩くのは、何だか心地よかった。
しっかりと肩を抱かれ、安心して寄り添えた。
てか、人目を気にせず並んで歩けるだけでもうれしい。
それだけのことが、幸せに感じられた。
ふわふわと足元がおぼつかないぐらい夢見心地な私に、峠くんが言った。
「まなさんは上総の所有物じゃない。もちろん俺のモノでもない。だから自由にしていいんだよ。」
自由……。
何て心細い言葉だろう。
私は、ぶるぶると首を横に振った。
「突き放された気がする。嫌。」
思わずギューッと峠くんにしがみついた。
私の肩を抱く峠くんの手にも力がこもった。
「ごめん。そんなつもり、ない。まなさんが望むなら、ずっとそばにいるから。」
ふるふるっと、勝手に身体が震えた。
うれしくて、体の奥が疼いた。
「望んでる。もう、遠くに行かないでほしい。」
抱いてほしい。
……本当はそう言いたい。
でも、さすがにそれは言えなかった。
今夜、上総んは、私を抱くだろう。
それがわかってて、今、峠くんを求める自分をあさましく感じた。
いやな女。
峠くんは、それ以上何も言わなかった。
ただ、黙って私のそばにいてくれた。
図書館や学園でのお勉強はもちろん、病院にも付き添ってくれた。
山崎医師は、私に表情が戻っていることを喜びつつも、懸念した……上総んと2人きりの時の私を。
「バランスを保ててるといいのですが。」
わからない。
決して嫌いじゃないもの。
むしろ、上総んが心配。
加倉や峠くんと再会して以来、上総んの私を見つめる瞳が変わってしまった気がする。
切羽詰まった苦しそうな瞳。
何も言わない、私を責めることもない。
けど、確かに上総んは苦悩していた。
……これ以上、傷つけることはできない。
気がつくと、私は、上総んといる時には、峠くんのことを考えないように努めていた。
無意識の自己防衛なのだろう。
峠くんを想いながら上総んに抱かれることに耐えられるほど、私は強くもなければ、開き直ることもできなかった。
心を空っぽにしてても、身体は快楽を享受する。
上総んは巧みに私を翻弄する。
もともと無垢だった私を女にしたヒトだ。
私の身体を、私自身以上によく知っている。
だから、乱れても仕方ない。
そう諦めて、上総んの熱に身を任せた。
せめてもの救いは、山崎医師がピルを処方してくれてたこと。
上総んに隠れて、命綱のように飲み続けた。
峠くんと一緒に加倉を東京駅まで見送りに行った。
加倉は、新幹線に乗る前にこう言った。
「紫原。我慢するな。俺と違って、上総も峠も、お前のワガママは何でも聞くから、無理せず好きに生きろ。二股だろうが気にするな。」
「やだ。気にする。裏切りたくない。」
そう言う私の両肩に、峠くんの両手の熱が心地よかった。
「ばーか。今のお前、自分自身を裏切ってるようなもんじゃん。」
涙が、ぶわっとこみ上げてきた。
「峠。紫原のこと、頼む。」
最後にそう言い残して、加倉は行ってしまった。
峠くんに支えてもらって歩くのは、何だか心地よかった。
しっかりと肩を抱かれ、安心して寄り添えた。
てか、人目を気にせず並んで歩けるだけでもうれしい。
それだけのことが、幸せに感じられた。
ふわふわと足元がおぼつかないぐらい夢見心地な私に、峠くんが言った。
「まなさんは上総の所有物じゃない。もちろん俺のモノでもない。だから自由にしていいんだよ。」
自由……。
何て心細い言葉だろう。
私は、ぶるぶると首を横に振った。
「突き放された気がする。嫌。」
思わずギューッと峠くんにしがみついた。
私の肩を抱く峠くんの手にも力がこもった。
「ごめん。そんなつもり、ない。まなさんが望むなら、ずっとそばにいるから。」
ふるふるっと、勝手に身体が震えた。
うれしくて、体の奥が疼いた。
「望んでる。もう、遠くに行かないでほしい。」
抱いてほしい。
……本当はそう言いたい。
でも、さすがにそれは言えなかった。
今夜、上総んは、私を抱くだろう。
それがわかってて、今、峠くんを求める自分をあさましく感じた。
いやな女。
峠くんは、それ以上何も言わなかった。
ただ、黙って私のそばにいてくれた。
図書館や学園でのお勉強はもちろん、病院にも付き添ってくれた。
山崎医師は、私に表情が戻っていることを喜びつつも、懸念した……上総んと2人きりの時の私を。
「バランスを保ててるといいのですが。」
わからない。
決して嫌いじゃないもの。
むしろ、上総んが心配。
加倉や峠くんと再会して以来、上総んの私を見つめる瞳が変わってしまった気がする。
切羽詰まった苦しそうな瞳。
何も言わない、私を責めることもない。
けど、確かに上総んは苦悩していた。
……これ以上、傷つけることはできない。
気がつくと、私は、上総んといる時には、峠くんのことを考えないように努めていた。
無意識の自己防衛なのだろう。
峠くんを想いながら上総んに抱かれることに耐えられるほど、私は強くもなければ、開き直ることもできなかった。
心を空っぽにしてても、身体は快楽を享受する。
上総んは巧みに私を翻弄する。
もともと無垢だった私を女にしたヒトだ。
私の身体を、私自身以上によく知っている。
だから、乱れても仕方ない。
そう諦めて、上総んの熱に身を任せた。
せめてもの救いは、山崎医師がピルを処方してくれてたこと。
上総んに隠れて、命綱のように飲み続けた。



