ドキドキしたけど、吉岡先生は鼻で笑った。
「私は専門外だから、発表の内容に口出しできるほどわからないけど、くそ生意気で鼻っ柱の強さは君そっくりだね。ああ、でも、この子のほうが色気がなくて、ギスギスしてて、いいね。」
……いいね、って言われても、全く誉められてないんですけど。
なんか、毒っ気がすごくて、対峙するのパワーいるわ、この人。
あ、そうだ!
「吉岡先生!私の同期が、先生のご専門に近いと思うのですが、アドバイスいただけませんか?紀要と学会誌の抜き刷りを持ってきてるので。……加倉ーっ!!!」
私は返事を待たずに、大声で加倉を呼びつけた。
「……呆れた。それでも女性か。」
ぶちぶち文句を言う吉岡先生の目の前に、慌てて飛んできた加倉を差し出した……スケープゴートのように。
boy meets girl……ではなく、old boy meets boy。
2人は、出逢うべくして出逢ってしまった。
後から聴けば、吉岡先生は加倉に一目惚れしたらしい。
加倉は毛むくじゃらでもなければ、太ってもないけど。
そして、加倉は加倉で、吉岡先生の意味ありげな瞳に捕らわれてしまった、そうだ。
程なく、2人は付き合い始めた。
加倉は、山崎医師との関係も切ることができず、二股になってしまった。
まあ、すぐに山崎医師が勘づいて、修羅場ったようだ。
結局、お互いの将来のために、山崎医師と加倉は完全に別れてしまった。
「吉岡先生とは遠距離なのに、大変ねえ。」
一応、遠距離恋愛経験者なので、気を遣ってそう言った。
ら、加倉は言いにくそうに言った。
「それが、俺、関西に行くことになるかも。博物館学芸員の採用試験受けることになった。問題も模範解答もくれるらしいから、たぶん、内定してるんだと思う。」
はあっ!?
「何、それ!ずるいー!しかも、関西って!どこ?」
まあ、聞くまでもなく、吉岡先生が呼び寄せるんだろつけどさ。
「滋賀。」
えええ!
いや、待て!加倉!
滋賀県は関西じゃないぞ!
関西の「関」は、安宅の関でも箱根の関でもなくて、平安時代から逢坂の関を指す。
京都や大阪で、滋賀を関西と言ってしまうと、顰蹙買うぞ。
……ま、それはいいとして、だ。
「滋賀なんや。えー。びっくりした。大丈夫?ゲリラ豪雨もあるし、意外と豪雪地帯よ?まあ、琵琶湖は津波ないと思うけど……あ、でも湖底火山が噴火したら……」
「どうでもいいよ、それ。てか、お前、パニクってる?」
加倉に呆れられて、確かに自分が変なことを言ってることに気づいた。
深呼吸してから、改めて聞いた。
「専門は?加倉の研究、活かせるの?」
すると加倉は肩をすくめた。
「能衣装や面(おもて)をかなり所蔵してる大名家の資料の研究・整理だから、俺にとっては専門ドンピシャ。断れねーわ。」
そっかぁ。
さすがだな、吉岡先生。
「確かに加倉に向いてるわね。確か、そこって内部の研究会が大変で、ヒトの出入りが激しいの。加倉なら、逆に燃えそう。」
うん。
イイ話だ。
「おめでとう。淋しいけど、よかったね。」
本当に淋しいけどな。
「そんな顔すんな。紫原が実家帰ったり、今みたいに上総が南座に出る度に会えるじゃん。」
「会う機会があるのと、ほぼ毎日そこにいるのと、全然違うわ。」
そう言ったら、ボロボロと盛大に涙がこぼれ落ちた。
「私は専門外だから、発表の内容に口出しできるほどわからないけど、くそ生意気で鼻っ柱の強さは君そっくりだね。ああ、でも、この子のほうが色気がなくて、ギスギスしてて、いいね。」
……いいね、って言われても、全く誉められてないんですけど。
なんか、毒っ気がすごくて、対峙するのパワーいるわ、この人。
あ、そうだ!
「吉岡先生!私の同期が、先生のご専門に近いと思うのですが、アドバイスいただけませんか?紀要と学会誌の抜き刷りを持ってきてるので。……加倉ーっ!!!」
私は返事を待たずに、大声で加倉を呼びつけた。
「……呆れた。それでも女性か。」
ぶちぶち文句を言う吉岡先生の目の前に、慌てて飛んできた加倉を差し出した……スケープゴートのように。
boy meets girl……ではなく、old boy meets boy。
2人は、出逢うべくして出逢ってしまった。
後から聴けば、吉岡先生は加倉に一目惚れしたらしい。
加倉は毛むくじゃらでもなければ、太ってもないけど。
そして、加倉は加倉で、吉岡先生の意味ありげな瞳に捕らわれてしまった、そうだ。
程なく、2人は付き合い始めた。
加倉は、山崎医師との関係も切ることができず、二股になってしまった。
まあ、すぐに山崎医師が勘づいて、修羅場ったようだ。
結局、お互いの将来のために、山崎医師と加倉は完全に別れてしまった。
「吉岡先生とは遠距離なのに、大変ねえ。」
一応、遠距離恋愛経験者なので、気を遣ってそう言った。
ら、加倉は言いにくそうに言った。
「それが、俺、関西に行くことになるかも。博物館学芸員の採用試験受けることになった。問題も模範解答もくれるらしいから、たぶん、内定してるんだと思う。」
はあっ!?
「何、それ!ずるいー!しかも、関西って!どこ?」
まあ、聞くまでもなく、吉岡先生が呼び寄せるんだろつけどさ。
「滋賀。」
えええ!
いや、待て!加倉!
滋賀県は関西じゃないぞ!
関西の「関」は、安宅の関でも箱根の関でもなくて、平安時代から逢坂の関を指す。
京都や大阪で、滋賀を関西と言ってしまうと、顰蹙買うぞ。
……ま、それはいいとして、だ。
「滋賀なんや。えー。びっくりした。大丈夫?ゲリラ豪雨もあるし、意外と豪雪地帯よ?まあ、琵琶湖は津波ないと思うけど……あ、でも湖底火山が噴火したら……」
「どうでもいいよ、それ。てか、お前、パニクってる?」
加倉に呆れられて、確かに自分が変なことを言ってることに気づいた。
深呼吸してから、改めて聞いた。
「専門は?加倉の研究、活かせるの?」
すると加倉は肩をすくめた。
「能衣装や面(おもて)をかなり所蔵してる大名家の資料の研究・整理だから、俺にとっては専門ドンピシャ。断れねーわ。」
そっかぁ。
さすがだな、吉岡先生。
「確かに加倉に向いてるわね。確か、そこって内部の研究会が大変で、ヒトの出入りが激しいの。加倉なら、逆に燃えそう。」
うん。
イイ話だ。
「おめでとう。淋しいけど、よかったね。」
本当に淋しいけどな。
「そんな顔すんな。紫原が実家帰ったり、今みたいに上総が南座に出る度に会えるじゃん。」
「会う機会があるのと、ほぼ毎日そこにいるのと、全然違うわ。」
そう言ったら、ボロボロと盛大に涙がこぼれ落ちた。



