トイレに立った時に、松尾先生に連絡を入れた。
『手応えあったみたいね!』
いきなりそう言われて、驚いた。
「なんでわかるんですか?」
『今日観劇したヒトのツィッターを見たの。焦ってるように見えた、って。昨日までは、頭真っ白だったでしょ?上総丈。変化が生じたんだな、って思って。千秋楽、間に合いそう?』
……ツィッター!
そんなもので情報収集してるのか。
いろんなところにアンテナを張り巡らしてらっしゃるとは思ってたけど……お歳を考えると、ただただ感心した。
「わかりません。でも、上総んが幼少期にお世話になってた踊りの師匠が、お稽古を見てくださるようです。」
そう伝えると、
『あら!』
と、明らかに松尾教授のテンションが上がった。
『芳澤さんとこよね?あらあらあら~~~!……紫原!そのお稽古、千秋楽が終わっても続けてもらうように働きかけなさい!どうせ来月、上総丈お休みなんだから、京都でみっちりお稽古なさいよ。紫原も夏休みだし、ちょうどいいじゃない。私も、早めに軽井沢から帰って来ようっと。』
はあ?
「あの、なんで?何かあるんですか?」
『何って!……ああ、芳澤さん家(ち)、あんたが好きそうな茶器も所蔵してるわよ。茶道も華道も関わり深いお家(うち)だし。』
明らかにそれだけじゃないでしょう?
「そんなとってつけたような理由じゃなくて、松尾先生が食いつく理由……イケメンでもいるんですか?」
何気にそう聞くと、松尾教授は電話の向こうでキャーキャーとはしゃいで笑っていた。
正解らしい。
『何年か前に副家元披露をした芳澤綾之助くんがね、もうね~~~、色気だだ漏れなのよ~~~。』
あやのすけ。
お孫さんの彩乃くんのことかしら。
『まあ、いいじゃないの。上総丈のリハビリに付き合ってあげなさいよ。泊まるとこなければ、うちに泊まってもいいわよ?どうせ来週から空き家だし。』
「いや、あの、私は実家が近いんで。」
そう言ったけど、怒られた。
『今は上総丈と一緒にいたげないでどうすんの!中野に論文見てほしけりゃ、上総丈を元に戻すのね!』
……理不尽だ。
「おかあさん。着物ありがとうございました。あの……蓬莱屋さんにいただいたお着物だったんですか?」
トイレのついでにお母さんの居間に寄って、そう尋ねた。
「ほんま、おしゃべりなおっさんや。……そろそろ脱ぐか。もうええやろ?」
おっさん!
大旦那を、おっさん!
「脱ぎます。ありがとうございました!」
慌てて帯締めを解き、その場で脱皮した。
身軽になってお座敷に戻ると、既にそこはお稽古場になっていた。
2人はお料理の残ったお膳から離れて、手の角度がどうだとか、細かい細かいことを相談していた。
私は、自分のお膳について、食事の続きをした。
……もともと京都の和食なら美味しく食べられるのだけど、東京で食事に苦労してきただけに、ものすごーくありがたい。
いい素材を、極上のおだしで煮含める。
簡単なようで、一品一品に時間と手間がかかってる炊き合わせを食べながら、峠くんを思い出した。
峠くんもまた、手間を惜しまず、私の食べられるお料理を作ってくれてた……。
昨日の朝、別れてから全く連絡し合ってない。
まあ、これまでもメールとかし合う付き合いはしてこなかったけれど……今は罪悪感を覚えた。
『手応えあったみたいね!』
いきなりそう言われて、驚いた。
「なんでわかるんですか?」
『今日観劇したヒトのツィッターを見たの。焦ってるように見えた、って。昨日までは、頭真っ白だったでしょ?上総丈。変化が生じたんだな、って思って。千秋楽、間に合いそう?』
……ツィッター!
そんなもので情報収集してるのか。
いろんなところにアンテナを張り巡らしてらっしゃるとは思ってたけど……お歳を考えると、ただただ感心した。
「わかりません。でも、上総んが幼少期にお世話になってた踊りの師匠が、お稽古を見てくださるようです。」
そう伝えると、
『あら!』
と、明らかに松尾教授のテンションが上がった。
『芳澤さんとこよね?あらあらあら~~~!……紫原!そのお稽古、千秋楽が終わっても続けてもらうように働きかけなさい!どうせ来月、上総丈お休みなんだから、京都でみっちりお稽古なさいよ。紫原も夏休みだし、ちょうどいいじゃない。私も、早めに軽井沢から帰って来ようっと。』
はあ?
「あの、なんで?何かあるんですか?」
『何って!……ああ、芳澤さん家(ち)、あんたが好きそうな茶器も所蔵してるわよ。茶道も華道も関わり深いお家(うち)だし。』
明らかにそれだけじゃないでしょう?
「そんなとってつけたような理由じゃなくて、松尾先生が食いつく理由……イケメンでもいるんですか?」
何気にそう聞くと、松尾教授は電話の向こうでキャーキャーとはしゃいで笑っていた。
正解らしい。
『何年か前に副家元披露をした芳澤綾之助くんがね、もうね~~~、色気だだ漏れなのよ~~~。』
あやのすけ。
お孫さんの彩乃くんのことかしら。
『まあ、いいじゃないの。上総丈のリハビリに付き合ってあげなさいよ。泊まるとこなければ、うちに泊まってもいいわよ?どうせ来週から空き家だし。』
「いや、あの、私は実家が近いんで。」
そう言ったけど、怒られた。
『今は上総丈と一緒にいたげないでどうすんの!中野に論文見てほしけりゃ、上総丈を元に戻すのね!』
……理不尽だ。
「おかあさん。着物ありがとうございました。あの……蓬莱屋さんにいただいたお着物だったんですか?」
トイレのついでにお母さんの居間に寄って、そう尋ねた。
「ほんま、おしゃべりなおっさんや。……そろそろ脱ぐか。もうええやろ?」
おっさん!
大旦那を、おっさん!
「脱ぎます。ありがとうございました!」
慌てて帯締めを解き、その場で脱皮した。
身軽になってお座敷に戻ると、既にそこはお稽古場になっていた。
2人はお料理の残ったお膳から離れて、手の角度がどうだとか、細かい細かいことを相談していた。
私は、自分のお膳について、食事の続きをした。
……もともと京都の和食なら美味しく食べられるのだけど、東京で食事に苦労してきただけに、ものすごーくありがたい。
いい素材を、極上のおだしで煮含める。
簡単なようで、一品一品に時間と手間がかかってる炊き合わせを食べながら、峠くんを思い出した。
峠くんもまた、手間を惜しまず、私の食べられるお料理を作ってくれてた……。
昨日の朝、別れてから全く連絡し合ってない。
まあ、これまでもメールとかし合う付き合いはしてこなかったけれど……今は罪悪感を覚えた。



