オトナチック

「水炊き、美味かったな」

そう話しかけてきた杉下くんに、
「うん、美味しかったね」

私は言い返した。

すっかり日が暮れてしまった夜の道を、私たちは一緒に自宅へと足を向かわせていた。

時間は夜の9時になろうとしていた。

マンションの中に足を踏み入れると、杉下くんは郵便物の確認をするために自分の名前が書いてあるポストへと手を伸ばした…と思ったら、すぐに手を出した。

「――ッ…!?」

杉下くんはポストに伸ばしていた手をもう片方の手で押さえていた。

痛そうに顔をゆがめている杉下くんに、
「どうしたの?」

心配になって、私は声をかけた。

「何か…今、刃物のようなもので指を切ったような気がするんだ」

杉下くんはそう言って片方の手を離した。