「それに、大切に育てられてたんだなって言うことがわかったよ」

私は言った。

杉下くんは苦笑いを浮かべると、
「その分、ばあちゃんには迷惑をかけたけどな」
と、言った。

「でも心の底から杉下くんのことを大切に思っているんだなって感じたよ」

そう言った私に、
「ありがとう、高浜」

杉下くんが言った。

私もそうだけど、杉下くんも名前で呼んでいなかった。

婚約者らしくお互いの名前で呼びあうのは、彼のおばあさんの前だけ。

それ以外は、普段通りに名字で呼びあう。

たったそれだけのことなのに、私の心は何故だかよくわからないけれど寂しい気持ちに包まれた。