“寺本”と言う名前を聞いた瞬間、杉下くんの態度が変わった。

杉下くんは動揺を隠せないと言う様子だった。

“寺本”と言う人と杉下くんは、一体どんな関係だったのだろう?

そう思ったら、私の頭の中である仮説が浮かんだ。

「――まさか、ね…」

そんなことがある訳ないと、私は頭の中に浮かんだ仮説を消そうとした。

だけど、もし私の仮説が正しかったら?

確かめたいと思ったけど、確かめる訳にはいかないと思った。

何故なら…それがお互いにとって、よくないことだからだ。

仮説を確かめてしまったら…私も傷ついて、杉下くんも傷つくことだろう。

私は今度こそ頭の中に浮かんだ仮説を消すと、バスルームへと足を向かわせた。