オトナチック

「ばあちゃんはほうじ茶で、芽衣子は紅茶でいいよな?」

杉下くんは確認するように聞いてきた。

「うん、お願いね」

私が首を縦に振ってうなずいたことを確認すると、
「じゃ、行ってくる」

杉下くんは病室を後にした。

「気をつけて行ってくるんだよ」

後ろ姿の杉下くんにおばあさんは声をかけた。

杉下くんはそれに答えるように、右手をあげた。

彼が私の好きな飲み物を覚えてくれていたことが、嬉しくて仕方がなかった。

いつかの買い物につきあった帰り道に寄ったカフェで杉下くんはコーヒーを2つ頼もうとしていたけど、その時に私はこう言ったのだ。

――コーヒーはお腹が痛くなるから紅茶にして欲しいの

もうずいぶんと前の出来事のはずなのに、杉下くんは未だに覚えてくれていた。