オトナチック

スーツからグレーのスウェットに着替えた杉下くんがリビングに戻ってきた。

「あ、そうだ。

その人、またくるって言っていたか?」

床のうえに腰を下ろしながら聞いてきた杉下くんに、
「ううん、何にも言ってなかった」

私は首を横に振って答えた。

「そうか。

明日なんだけどさ、何か予定入ってる?

久しぶりにばあちゃんの見舞いへ行こうと思っているんだ。

仕事が忙しくなると行けなくなるから今のうちに行きたいんだ」

そう言った杉下くんに、
「いいよ、行こうか」

私は首を縦に振ってうなずいた。

「また婚約者の役をよろしくな」

チクリと痛んだ胸の痛みを隠すように、
「うん、わかってるよ」

私は返事をした。