オトナチック

杉下くんに好きだと言ってしまったら、この関係は壊れてしまうのかも知れない。

本当は彼に好きだと告白して、両思いになって…最終的には本当の彼の婚約者になりたいと思ってる。

でも、今のままでも杉下くんは私に優しくしてくれている。

私のことを同僚として、同居人として、仲良く接してくれている。

もし私の勝手でこの関係が壊れてしまったらと思うと…正直、考えたくもなかった。

偽りの関係のままの方が、私には向いているのかも知れない。

契約の関係のままの方が、お互いにとってちょうどいいのかも知れない。

婚約者と言うのは、ただの飾りだ。

末期の癌になっている杉下くんのおばあさんを安心させるためのウソにしか過ぎない。

「――契約のままがいいんだってば…」

自分に言い聞かせるように呟いて、気づいてしまったこの気持ちに頑丈な鍵をかけた。