唇に柔らかい感触。
目を閉じててもわかるほど長い一煌の睫毛。
こんな間近で幼馴染の顔を見たのは小さい頃以来。
微動だにせずただ目を見開いて驚くことしかできなかった。
一煌の瞼がゆっくりと開き、私を自分の瞳の中へ映す。
「ずっと言わないつもりでいようと思ってたけど、琴羽が俺を頼ろうとするから……。
今日のことは謝らないから」
動けない私にそう言い残すと一煌は静かに私の部屋から出て行った。
一瞬のことで頭がついていかない。
今……何が起こったの?
ゆっくりと右手を動かして指先を自分の唇にそっと当てる。


