「いいよ、返さなくて。宿代と食費にしては多すぎって思うかもしれないけど、感謝の分、上乗せしてるから」

「感謝の分?」

「優しくしてくれてありがとう、嬉しかった。元気でね、寒くなってきたから風邪引かないように」

 さらりと言われて、返す言葉がなかった。

 何それ、すごくいい人みたいじゃないか。

 優しいのは……ゆうひ工場長だ。

 短い間だったけど一緒に生活していて、そう思った。

 食器洗いや買い物を進んでしてくれたり、ベランダで鉢植えしているネギの水遣りをしてくれたりした。
 一つしかないベッドを私に譲り、寝袋に入って床に転がって寝ていた。

 申し訳ないと気に病む私に、新鮮で楽しいと笑ってくれた。

 涼しげな切れ長の瞳の、目尻が下がるたびに、気分が癒された。

 垂れ目がいいなと思ったのは、ゆうひ工場長が初めてだ。

 私の元々のタイプは、男らしくキリっとした目元の人だ。


 ――あさひ部長のような。