駅とは違う方向に進んで行く二人の後を尾行した。

 やっぱり人違い?

 でも傘を持っていないほうの手で男性が提げているビジネスバッグには、見覚えがある。
 背格好や歩き方も、ゆうひ工場長だ。

 繁華街の外れに入って行った二人は、とある場所で足を止め、傘を畳んだ。

 見つからないようにさっと建物の陰に身を潜めた。

 そうっと覗いて、ばっちり目撃してしまった。

 ラブホテルへ入るゆうひ工場長を。

 お連れの女性の顔もばっちり目撃した。見知っている相手でびっくりした。

 マジですか。
 
 広報課にいた高島さん。二年後輩だ。
 広報課は花形部署で、芸術大学出身などクリエイティブな才能のある社員が多い。

 女性社員もいかにも『デキる女』という感じで男勝りな人が多いなか、高島さんはふんわかした天然っぽい子だった。
 だった、となぜ過去形かというと、去年辺りから随分雰囲気が変わったからだ。

 営業課の男たちの間で噂になっていて、同期ネットワークで流れてきた。
 たぶん付き合ってる男が悪くて、影響されたんだろうって。


 それって、ゆうひ工場長のことだったのか!?

 勤務意欲が低下し、欠勤がちになった高島さんは、半年ほど前に辞職した。

 その後、どうしているのか知らなかった。
 まさかこんな形で再会するとは思いもよらなかった。