計画的俺様上司の機密事項

わたしの手をひっぱると、エレベーターホールへと向かい、上ボタンを押した。

強引すぎるのは家の中だけだと思っていたけれど、実際会社内で見せられるなんて。

振りほどこうとしたけれど、さらにシンちゃんの握る力が強まった。


「ちょ、ちょっと結城部長。痛いですってば」


「だから騒ぐな」


すぐにエレベーターが来ると、やっぱりわたしをひっぱりあげて、エレベーターの中へと誘導する。

抵抗をしようと思っても、すばやくエレベーターを閉めて、9階のボタンを押した。


「ちょ、ちょっと上の階なんて」


上階は確か常務や社長が使う部屋で、普通の社員は立ち入りが制限されている場所だ。

シンちゃんはわたしの慌てぶりにも気にもとめず、後ろからぎゅっと抱きしめた。


「どうした? こうして欲しかったんじゃないのか」


「そんなこと、して欲しくないですって」


スーツ越しにシンちゃんに抱きしめられるなんて。

途中で誰かエレベーターに乗ってこられたらどうしよう。

シンちゃんを振りほどこうと抵抗してみても余計腕の力を強めるだけだった。


「嫌がってないよ。なあ?」


後ろからわたしの顔を伺っている。

かすかに息が耳元にかかってくすぐったい。


「指示に従ってるだけです」


「つきあってもらうぞ、夏穂」


こんな状態で他の人がエレベーターに乗ってきたらどうしようという気持ちと、後ろから抱きしめられているはがゆさで頭が混乱している。

早く目的の9階に二人だけでたどり着きたい。