計画的俺様上司の機密事項

買ってくれた紙袋たちをベッドの上に並べる。

こんなに買ってもらってよかったのかな、と心配になった。

洋服はそれなりに気をつけてはいたものの、趣味のほうへお金を使ってしまうので、どうしても洋服は適当なものを選びがちになっていた。

シンプルだけど、カジュアルな洋服にシンちゃんのセンスはすごいな、と感心する。

だけど、百貨店の女の人たちの目がすごかった。

彼女だと紹介したあとの店員さんの冷たい目が痛かったなあ。

それでもシンちゃんに接するときの態度は恋をしているように、目を輝かせて声も甘ったるかった。

背が高いだけでも目立つのに、端正な顔にモデルさんぽい洋服だったし。

あの中に付き合っていた人がいたのかなあ。

おやじシンちゃんだったら絶対にありえるし。

でも、何でそんなことでいちいち怒らないといけないんだ、わたしは。

洋服を選んでくれたときのシンちゃんのうれしそうな顔を思い出して、胸がキュンとなる。

外で食べたときもわたしを見なら食べる顔はとろけてしまいそうになる。

いかん、いかん。

完全にシンちゃんに気持ちがもっていかれている。

お母さんが勝手に決めて勝手に居候しているだけなんだから。

着替えようとTシャツを脱いだときだった。


「夏穂。ごはんできたぞ」


「ちょ、ちょっとノックしないで開けないでよ」


着ていたTシャツで胸を隠す。


「お、いいもの見せてもらった。ん? ごはん前に誘惑されちゃったか。困ったなあ」


「そうじゃないですって。着替えていきますからっ」


「はいはい、冷めないうちに来いよ」


ニヤニヤと笑いながら、鼻歌交じりでシンちゃんは部屋を出て行った。

まったく、人がせっかくシンちゃんのこと、褒めようとしたのに。

キュンとした数秒を返してほしい。