計画的俺様上司の機密事項

食休みをしてからお店を出た。

また食事代はすべてシンちゃんが払ってくれた。


「まだ用事なんですかっ。もう帰りましょうよ」


「とっておきの場所があるんだ」


シンちゃんとお店を出てもう帰るのかと思ったら、ますます元気が出たようで家へ帰る態度をみせようとしない。


「ええ〜。もういいですって」


かなりの駄々っ子状態なわたしにシンちゃんはふてくされることなく、前を向いて歩いている。

少しだけ足の速さを緩めると、自然とシンちゃんも足の速度を弱めてくれた。だからちょっと意地悪してその場に立ち止まった。

ちょうど駅へ向かう歩道で、人の往来も多い幹線道路沿いの道だ。


「もう少しだ。疲れたなら、おんぶでもするか? 昔みたいに」


ほら、と紙袋を手にしているのにもかかわらず、シンちゃんはその場にしゃがみこむ。

カップルや家族連れ、マラソンランナーやら、暇を持て余してそうなおじさんとかがシンちゃんの行動にじろじろと白い目で見ながら往来していった。


「恥ずかしいからいいです。この靴、歩きやすい構造になってるって話聞きましたしっ」


「じゃ、まだ歩けるじゃん。行こうか」


意地悪してみたのに、まさかの行動に顔から火が出そうになった。


「ご、ごめんなさい。つい意地悪しちゃいました」


「そうだと思った。まあ、いつかお返しさせてもらうから」


と、ひょうひょうとした顔でシンちゃんがいうものだから、これはまたおやじシンちゃんか、と思ったら恥ずかしくなって顔が熱くなった。

信号が赤になり、青になるまで待っていたところ、シンちゃんがわたしの顔を覗き込んだ。


「どうした。顔、赤くなってるぞ」


「な、なんでもないですって」


「女を捨ててないって証拠だな。安心したよ、夏穂」


そういって、シンちゃんは耳元で囁いた。

絶対に信号待ちしてる他の人に聞かれてるってわかってるくせに。

は!? 何いっちゃってるの、と声を荒げたかったけれど、早く青になってほしいという気持ちともうちょっと横で並んで待っていたいという気持ちが交錯した。