計画的俺様上司の機密事項

「シンちゃん、もう用事は済んだの? もう疲れました。帰りましょうよ」


さすがに初めていく場所ということもあったので、緊張したのか少し疲れた。

一緒に並んで歩いてくれて、しかも買い物してくれたシンちゃんにはありがたいことなんだけど。


「昼飯まだだろ」


「どっか適当にファーストフードでも買って帰りましょうよ」


「ダメだ。付き合ってもらう」


「シンちゃんだって、荷物たくさんあるんだし」


「オレのことはどうでもいいから。とにかく付き合え」


百貨店を出てから少し歩いた川沿いの道を歩いて行くと、オレンジの屋根に白い木製のちょっと古めかしい洋風の2階建ての建物がみえる。

確かここは、ウチの会社で扱っているグルメ情報誌でも特集で人気を得た老舗の洋食レストランだ。

カップルが多くてなかなか入りづらいお店で地元に住んでいながら一度もいったことがなかった。


「予約してあるから。ほら、入るぞ」


そういって、わたしの手をさりげなく握り、入り口へと案内した。


木製の扉を開けると、そこには茶色や黒色を基調にしたアメリカンカントリーテイストのファブリックが揃えられていて、すべてのテーブルは昼ということもあり、びっしりお客さんが座っていた。

予約をしていると店員に告げると、店の奥へと案内された。ひさしのあるテラスへと向かう。

テラス席にもすでにカップルで埋め尽くされていたけれど、ちょうどひとテーブルが空いていた場所は一番奥の席で、この店の中でも景色を一望できる最高のロケーションだった。

席に座ると、右横には大きな川が流れていて、太陽の光が水面を照らし、ひさしへとキラキラと反射していた。

岸にはボートがくくりつけられているので、ちょっとしたボート遊びもできそうだ。

駅に近いのにこんな静かで素敵なお店だったなんて。