計画的俺様上司の機密事項

嘘偽りないまっすぐなまなざしを送っている。

野上くんがわたしのこと、好きだなんて。

誰からも好かれてまぶしいくらいハツラツとして将来の期待の星とうたわれている野上くんが、特殊な趣味で生きていて家事だってもちろん恋愛なんてうまくこなせていないこんな地味なわたしを。


「返事、きかせてよ」

「だからわたしは、好きな人がいて……」


内線電話が鳴った。受話器をとろうとしたとき、野上くんの腕がのびてわたしの手首をつかんだ。


「野上くん」


「ねえ、僕じゃ、だめかな。有沢さんの彼氏に」


「野上くんにはもう少しふさわしい女の子がいると思う」


「だから該当する子は有沢さんなんだって」


野上くんのふりしぼる声に胸が痛かった。野上くんの期待にはこたえられない。

同期としての関係を築きたかっただけなのに。

まだ内線電話の着信音が鳴っている。


「内線、出ないと」


「わかったよ……」


野上くんはつかんでいた手首を離してくれて、受話器をようやく握った。


「4階、有沢です」


「真鍋だけど、3階にきてないからどうしたかと思ったんだけど」


真鍋先輩の口調が少しだけ早口になっている。気持ちに余裕がないときに発する真鍋先輩のくせだった。


「……すみません、立て込んでて」


「あらそうだったの。悪かったわね。もうこちらへ来られる?」


「はい。今から向かいます」


「待ってるね」


電話を切る。野上くんがまっすぐな目でじっとこちらをみていた。


「ごめん、下、いってくる」


「いい返事、期待してるから」


わたしは野上くんの言葉に返事することなく、そのまま部屋を飛び出した。