計画的俺様上司の機密事項

気を許したのか、野上くんは今までの怒りをごまかすように乾いた笑いをもらしていた。


「僕も強くいっちゃった。お詫びに食事にでもいかない?」


どうしてこういうときに、平気で食事に誘おうとするんだろうか。

仮に行くといったとしたら、この間のような野上くん主体で連れていかれるんだろう。

それにシンちゃんが黙っていないと思う。


「いけないよ。スケジュール空いてないし」


「じゃあ、わかった。それならクリスマスならどう? よかったら一緒に出かけない? 有沢さんと行きたいところがあるんだけど」


どうしてクリスマスに限定するの。

彼氏なんていそうもないっていうレッテルを貼っているんだろうな。

まるで野上くんがしがない地味子なわたしに憐れみを持って強引につながろうとしているようで腹が立った。


「ごめん。いけない」


「どうして? 僕のお願い、聞いてくれないんだよ」


さっきよりは物腰をやわらげながら野上くんはやんわりと言い聞かせた。


「……好きな人がいるの」


ポロリとわたしはつぶやいた。

それを聞いた野上くんは困惑したのか、その場をとりつくろうとしてわたしのそばから離れて、部屋中をうろうろと歩き始めた。


「誰?」


わたしのところにまた近づいて立ち止まる。野上くんの重く低めな声が部屋に響いた。


「野上くんにいう必要ないよ」


「有沢さんにとってはその人、片思いなんじゃない?」


「どうしてこんなこと言えるわけ?」


「きっと想いなんて届かないんじゃないかな、て」


「決めつけないで」


わたしの言葉に間髪入れず野上くんは鼻で笑う。


「僕ならすぐに有沢さんと付き合うこと、できるんだけど」


「冗談言わないでよ」


「冗談じゃないよ。僕は有沢さんのこと、研修のときからずっと好きだった」


息を吐くように、野上くんはわたしの目をじっと見つめて言い放った。