計画的俺様上司の機密事項

「言ったっけ。猫のぬいぐるみの話」


「あの猫のぬいぐるみ?」


「確か、あんたの誕生日にシンちゃんがお小遣いを貯めて買ってくれたんじゃなかったかな。あ、これって秘密だったかな。で、夏穂が怪我して次の日風邪ひいたとき、お見舞いに来てくれて、そういえば猫のぬいぐるみは、と聞いてきたの。そういえば部屋にもないし、どこにも見当たらなくて」


いつも肌身離さず持っていた猫のぬいぐるみだった。

シンちゃんを好きな女の子がわざととろうとしたけれど、嫌だって離さなかった。

結局その女の子の力が強くて、おわんの山の中へと吸い込まれるように落ちてしまったんだった。


「シンちゃん、いろいろ探してくれたんだよ。おわんの山が取り壊す前に見つかったんだけど、ボロボロになってて。シンちゃんが直そうとしてくれたんだけどね、うまくいかなくて。おばさん、秘密にしておいて、って断られたんだけど。もうこの話は時効だから、いいかな」


お母さんは懐かしむように微笑んだ。

そのあとはわたしの体のことを心配してくれたり、わたしの仕事のことを聞いて、新しいサイトみたわよ、なかなか面白いわね、職場の若い女の子たちが利用してるわよ、と教えてくれた。

シンちゃんやっぱり家事一般できるのねえ、と部屋の隅々までチェックをしていた。

お母さんは泊まっていくつもりだったけれど、どうしても戻らないといけないということで、夕方を少し過ぎたあたりで帰ることになった。


「夏穂はわかんないかもしれないけど、ずっとシンちゃん、あんたのこと思ってたんだから。わかってあげて」


「うん」


帰り際、お母さんが持っていた大きなカバンから、紫色の風呂敷で包まれたものを渡された。


「これ、よかったら食べて。美味しいかわからないけど、お母さんお手製のおかず。シンちゃんの作り置き、終わったんじゃないの?」


「え、それもまさか?」


「そう。変なものを食べそうで怖いっていうから。少しは足しにして」


「……ごめん。お母さん」


それじゃ、行くわね、またメールするから、といってお母さんは笑顔で家から出ていった。