計画的俺様上司の機密事項

「そっかあ。結城部長、出張なんだね」


日報を書いているそばで野上くんは自分の仕事にキリがついたらしく、張り切ってしゃべっている。


「そうね」


野上くんに顔をむけず、パソコン画面に集中しながら野上くんの話を聞き流していた。


「有沢さん、そっけないなあ。しばらくは僕と二人っきりなんだよ」


野上くんと二人きり、か。

あんなに眩しく美しく光っていた野上くんと同じ部屋にいるのに、何も魅力を感じなかった。

見飽きただけではなく、他の同期の人と比べると何かが違う。

キーボードから手を離し、はしゃぐ野上くんを冷静になってみていた。

野上くんは目を輝かせて嬉しそうだ。


「でも仕事はそんなに変わることないから」


「そうかもしれないけど、いるよりいないほうが気楽かもよ。僕も有沢さんも」


気が楽って。

確かにシンちゃんがいると威圧感が半端ないけど、それは上司がわたしたちを気にしている証拠だ。

野上くんと二人っきりで仕事をするとなると、野上くんの別の顔が現れるんじゃないか。

わたしの考えすぎかな。

「気兼ねなく有沢さんに話しかけられるし。結城部長がいるとまるで僕と有沢さんを監視してるように睨んでくるんだもんな。まいっちゃうよ」


はあ、とだらしないため息をついて、野上くんはカバンに荷物を詰め込んでいた。


「さすがに、一緒に帰ろうっていっても断られそうな雰囲気だからやめとく。それじゃ、お疲れ様」


「お疲れ様」


野上くんはにこやかに笑みをたたえ、部屋を出て行った。

部屋に一人になったわたしは、出て行った頃を見計らって、強く息を吐く。

ようやく野上くんに対する息苦しさから解放された、そんな気がした。