計画的俺様上司の機密事項

急に胸が苦しくなる。

甘ったるいものを飲んだり食べたりしたから、胸焼けを起こしたのかもしれないけれど、それ以上にズキンと胸が痛くなった。

シンちゃんだったら、きっとこんな甘いモンよりもっとあっさりしたお菓子作ってやるわ、と聞こえてきそうだ。


「有沢さんごめんね。無事に話を聞けたよ」


「……そ、そう」


「ちょっと落ち着いたらさ、今度は情報誌に載ってない、新店舗をみつけたんだけど、行こうか」


わたしの顔を見ずに、さっきお店で聞いていたであろう話をメモにまとめている。

わたしの座っている周りのカップルや、女の子たちのグループが楽しそうでうらやましかった。

みんなおいしそうにコーヒー、デザートを食べて顔をほころばせ、楽しい会話へと昇華している。

わたしだけ見えない狭い部屋に閉じ込められたような感じだ。

野上くんはわざと下目遣いでわたしを見てくる。


「このあとなんだけどさ」


「……ごめん。急用思い出したんだけど」


楽しい雰囲気をぶち壊すのもなんだから、野上くんに声を絞っていった。

野上くんはそれを聞いて顔を曇らせる。


「え、これからが一番行きたいところだったんだけど」


「うん。ごめん。さっきのお金出すよ。こういうのはワリカンじゃないとね」


といって、カバンから財布を取り出すと、ランチ代とお茶代を合わせて3千円をテーブルに置いた。


「有沢さん、これは受け取れないよ。だって僕が行きたいっていったんだし」


「ごちそうさま。それじゃ、急ぐから」


野上くんが目の前に置かれたお札に困っているすきに、店を飛び出した。

路上に出て、ようやく息ができる。道行く人目もはばからず、冷たい風を腹いっぱい吸って、沈んだ気持ちを吐き出した。

デパ地下にいって夕飯買って帰ろう。お肉たっぷりな焼肉弁当でもいいか。

この中にもしかしたらシンちゃんと真鍋先輩がいるんじゃないかと思いながら、街行く人達を縫うようデパートまで歩いた。