計画的俺様上司の機密事項

「じゃあ、いってくるから」


とシンちゃんの部屋の前のドアに立ち、大声でいったけれど中から返事はない。

キャメルのロングジャケットに白い長袖カットソー、紺色の膝丈フレアスカートに黒のストッキングに歩きやすいローヒールの黒のパンプスを合わせた。

玄関のドアを開けて振り返ってみても、シンちゃんの反応もなく、でかけることにする。

街路樹のイチョウの葉がだいぶ黄色味を帯びていた。

薄い水彩絵の具で塗ったような水色の秋空を仰ぎ見ながら駅まで歩き、多くの客で混雑している駅の北口へと向かった。

野上くんは駅の広告が載った柱に背を持たれて待っている。

端からみればどこかの男性俳優さんのような雰囲気だ。

手元にはA4サイズが入りそうな黒のキャンパス地のトートバッグに、グレーと白が混ざったチェスターコートに白のニット、ダークグレーのチェック柄のパンツに茶色の靴を合わせていた。


「野上くん、ごめんね、遅くなって」


野上くんはわたしを見ると、目を丸くしてすぐに目を細くして笑った。


「ああいいよ。雰囲気違うね」


「そ、そうかな? 洋服、変だったかな」


「全然。じゃあ行こうか」


「うん」


野上くんと並んで歩くことはなかったので、恥ずかしくなって、何度も野上くんの後ろを追うように歩いた。

駅北口はおしゃれな洋服屋やブランドショップが立ち並んでいて、そのお店屋さんを通り越した先にある目抜き通り沿いにレストランや昔ながらの洋食屋、カレーショップが軒を連ねていた。


「ここなんだけどね」


ビルの1階にあるおしゃれな外観の洋食屋さんは開店して数年だが、平日のサラリーマンやOLだけでなく、休日でも絶えず客が入っていた。

情報誌や地元テレビの洋食紹介コーナーでもたびたび取り上げられる人気店だ。

昼ということもあり、外や中もお客で列が形成されている。

わたしたちも最後尾に並び、ようやく順番が回ってきたのは13時過ぎだった。