計画的俺様上司の機密事項

「ごめん、ありがとう。もう部長に言わなくていいから。無理なら自分で言うからさ」


「でもさ……」


野上くんは不服そうに言葉を返してきた。

けれど、優等生の壁を越えてしまって、せっかく新しい部署に抜擢されて、将来を期待されているであろう有望株の目を摘むようなマネはしたくない。


「いいの、いいの。野上くんは自分の仕事があるんだから」


「放っておけない」


野上くんは立ち上がり、いつしなくまっすぐな目をわたしに注いでいた。

こんなかっこいい人から真剣な視線を送られたらきっと恋に落ちてしまうんだろうか。

きっと野上くんは今まできれいな目で女性と見つめ合い、付き合っていたんだろうか。

野上くんに惚れられて女性も幸せなんだろうな。


「ありがとう。野上くん」


「また変な風に押し付けてくるようだったら言って。いつでも相談に乗るからさ」


野上くんは力強く言い放つと、席に座り、仕事をし始めた。

何気にキー入力のテンポがリズミカルなのは気のせいだろうか。

わたしはまたコーヒーを飲み、特集の記事についてあれこれ考えつつも、外部のスタッフからもらった記事の校正と画像処理をし始めた。

しばらくして野上くんの視線が気になったので、手を止めて首をかしげたら、


「有沢さん、日報書き終えたら、また一緒に帰ろう」


野上くんが声を弾ませている。


「野上くんの仕事の量にもよるけど」


「大丈夫。有沢さんに合わせるから」


野上くんの和ませるやさしい言葉に優等生の野上くんに戻ってよかったな、とほっとしながら、今日できる分の作業をした。